2 薬に共通するおはなし(1):吸収(A)の応用(9)
続いては静脈注射ですね。
静脈注射は、文字の通り血管(静脈)に注射するもの。
角度は15~20°くらい。
血管(の管の上下両方)を貫いてしまわないように、
三角定規の小さい角度(30°)のさらに半分の角度で刺しますよ。
血管壁の抵抗を感じて、
一回そこを突き抜けたら、もう針先は血管内のはずです。
薬を入れる前に、
血管にちゃんと入っていることを確認する必要があります。
注射器の押し子(ブランジャー:押しこむ部分)を
少しだけ引っ張って、
針の根本の部分に血の赤(逆血)があることを確認してから、
注射薬を押し込みますよ。
静脈に「薬を入れる」のではなく、
静脈から「血液を取り出す」なら採血になりますね。
採血には動脈血採血、静脈血採血、毛細血管血採血があります。
静脈血採血が一番多いですね。
それ以外の採血になるときには、
「その血液じゃなきゃいけない」理由があるときです。
静脈血採血で代用はできませんから、注意ですよ。
話を注射に戻して。
血管の中に薬を入れるのですから、
すぐに効く(即時吸収)ことになります。
すぐに効果が出てしまう以上、
薬を入れすぎてしまったら取り返しがつきません。
だから、看護師国家試験の計算問題に
「~何mlを注射器に取ればいいか」があるのですね。
もちろん、そもそもの大前提ですが。
「それが正しい薬なのか(薬と患者の名前チェック)」も
必要不可欠な確認点ですよ。
残りが筋肉注射。
大きな筋肉を狙って、ほぼ直角に刺す注射です。
筋肉には血管がたくさん通っています。
だから静脈注射にはかないませんが、
結構早く体の中へと吸収されていきます。
筋肉注射の代表は、
即時型(Ⅰ型)アレルギーのアナフィラキシーショックに使う
アドレナリン注射です。
食物アレルギーや蜂アレルギーの人が常に持ち歩いている
「エピペン」のことですね。
このアレルギーで怖いのは、
アナフィラキシーショックのせいで気道が極端に狭くなり、
気道閉塞状態になってしまうこと。
すぐに気道を広げる必要がありますが、
静脈注射のできる人や血管を探す時間的余裕はありません。
だから、太ももの外側に早く効く筋肉注射です。
針がちゃんと筋肉に届く長さに調節されていて、
練習・準備しておけば子どもでも自分でできる注射です。
太ももの外側には、
大きな血管や神経が通っていないことを
教科書(のイラスト)等で確認。
これで、安心して
アナフィラキシーショック時に筋肉注射ができますね。
次回、あなたの頭にうっすらと浮かんだ
「?」についておはなししますね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221108更新)