6 各論1:脈・血圧(心臓):心筋梗塞・狭心症(2)血管拡張薬(2)
前回、細胞膜電位変化を復習できましたね。
では、そこでカルシウムイオンの流れ込みを邪魔したら?
カルシウムチャネルが開いてから
「細胞内外のカルシウム濃度が同じ」になるところまでに、
時間がかかるようになりますね。
再度マイナスに戻るまでの時間が伸びていますから、
周囲の細胞への収縮命令伝達も遅くなりますね。
これによって血管平滑筋収縮が起こりにくくなり、
心筋の収縮もゆっくりになるのです。
「…心収縮ゆっくりって…それ、大丈夫なの?」
程良いゆっくりならば、
心筋に負担がかからなくていいのかもしれませんが。
徐脈(心拍数が少なすぎて、細胞が酸素・栄養分不足疑い)や
心不全(十分な血液を送り出せていない!)では
大変なことになります。
だから、
血管の平滑筋と心筋の両方に効く薬には注意が必要ですね。
血管平滑筋にも心筋にも効く薬は
ジルチアゼム(お薬名ヘルベッサー)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051504
ヘルベッサーの禁忌は、
「特定の不整脈のある人・重度の低血圧やうっ血性心不全の人」。
つまり「これ以上心臓の働きが穏やかになると、
生命危険!」な人ですね。
催奇形性や
胎児毒性(動物実験では胎児死亡)もありますから、
妊娠中や妊娠可能性のある人も禁忌ですね。
薬に過敏症(アレルギー)が出ると、
重い皮膚症状につながる可能性があるので
皮膚状態には要注意。
あとは、同じ酵素で分解される薬との相互作用もあります。
降圧目的の他の薬や抗不整脈薬、
麻酔剤や筋弛緩薬と一緒のときには特に注意が必要です。
「血管を広げて、心臓の負担を減らしてくれるのはいいけど…
ちょっとこの薬怖くない?」
だから「単に血圧を下げる(降圧)」目的では使いません。
あくまで「心臓の血管が狭まって大変!(狭心症)」なときに
使うお薬です。
純粋に血圧を下げることに注目したときには、
末梢血管の平滑筋には効くけど心筋には効かない
ニフェジピン(お薬名アダラート)などが使われます。
チャネルにくっつく位置(邪魔の仕方)によって
同じカルシウムイオンに対する薬でも働きが変わってきますよ。
血管の収縮・弛緩を命令するのは自律神経です。
自律神経には、交感神経系と副交感神経系があります。
交感神経系は原則として末梢血管収縮担当、
副交感神経系は原則として末梢血管拡張担当です。
副交感神経系の神経伝達物質アセチルコリンは
交感神経系でも使われますから…。
ここを邪魔する薬は
よほどうまく薬の形をコントロールしないと
意外なところに影響が出てしまいます。
だから、ここでは交感神経系だけで使う神経伝達物質
「ノルアドレナリン」に注目した薬が主役になりますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221214更新)