7 各論2:脈・血圧(血管):高血圧・低血圧(1)降圧薬(5)
心房性ナトリウム利尿ペプチドの働きに
似せて作ったお薬が、良く使われる降圧剤(利尿剤)です。
主にナトリウム再吸収を邪魔するチアジド系利尿剤と、
主に腎臓の血流量を増やすフロセミド(ラシックス)です。
チアジド系利尿剤の例としては、
ヒドロクロロアジドや
トリクロロメチアジド(フルイトラン)などがあります。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062378
http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00056852.pdf
これらは働きも禁忌もほぼ同じです。
遠位尿細管にあるナトリウムイオンと塩化物イオンを
同時に再吸収するところ(Na⁺-Cl⁻共輸送体)を邪魔します。
ナトリウムイオンが再吸収されないと、
ナトリウムイオンと仲の良い水も再吸収されないので、
尿として出る量が増える(利尿)…というわけですね。
血液中ミネラル(特にナトリウムイオン)が少ないときには
さらに低ナトリウム血症が悪化するので禁忌。
あと、何らかの理由
(途中で塊が詰まった!:尿路結石等)で
尿を出せない尿閉では禁忌。
体の外に尿を出せないのにどんどん尿を作らせては、
尿路のどこかで破裂してしまうかもしれません。
あと、急に腎臓の働きが悪くなった(急性腎不全)ときも、
さらに悪化させる危険性がありますから禁忌ですよ。
フロセミド(ラシックス)は腎臓の血流量を増やすことで、
糸球体でろ過される量(原尿量)を増やします。
ナトリウムの再吸収の邪魔もしますよ。
こちらはナトリウムイオンとカリウムイオンと
塩化物イオン2個との共輸送(Na⁺-K⁺-2Cl⁻)の邪魔です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059390
腎臓の働きが多少弱っていても利尿効果は出ますので、
乏尿(1日尿量400㎖以下)や
無尿(1日尿量100㎖以下)でも使えます。
さすがに尿閉では効果が出ないことに加えて、
破裂危険がありますから禁忌ですよ。
血液中ミネラル不足(ナトリウムやカリウム)も禁忌。
これまたどんどん尿に出ていってしまうからです。
あともう1つ、肝性昏睡時も禁忌です。
肝性昏睡というのは、
肝臓が十分に働けないせいでアンモニアを尿素に出来ず、
血液中にたまったアンモニア等が悪さをして
昏睡状態に陥っていること。
肝臓の働きが悪いので、
血中タンパク質のアルブミンをうまく作れません。
アルブミン不足は、むくみ(浮腫)の原因。
血液中から組織(血管外)へ水がしみ出していくせいで、
むくみと体内循環量低下が同時に起こります。
「体内循環量は増やしたいのに、どんどん原尿に…。
再吸収しようにも邪魔されちゃってる…」
これでは悪化一直線です。
だから肝性昏睡時はラシックスが禁忌なのですね。
以上、各種利尿による降圧剤のおはなしでした。
尿に関するホルモンの働きも復習できましたね。
狭心症のところの
「血管を広げるお薬」のところも見ておくことを忘れずに!
次回から、低血圧のおはなしに入ります。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221226更新)