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7 各論2:脈・血圧(血管):高血圧・低血圧(1)降圧薬(5)

2022年12月26日

心房性ナトリウム利尿ペプチドの働きに

似せて作ったお薬が、良く使われる降圧剤(利尿剤)です。

主にナトリウム再吸収を邪魔するチアジド系利尿剤と、

主に腎臓の血流量を増やすフロセミド(ラシックス)です。

 

チアジド系利尿剤の例としては、

ヒドロクロロアジドや

トリクロロメチアジド(フルイトラン)などがあります。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062378

http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00056852.pdf

これらは働きも禁忌もほぼ同じです。

遠位尿細管にあるナトリウムイオンと塩化物イオンを

同時に再吸収するところ(Na⁺-Cl⁻共輸送体)を邪魔します。

ナトリウムイオンが再吸収されないと、

ナトリウムイオンと仲の良い水も再吸収されないので、

尿として出る量が増える(利尿)…というわけですね。

 

血液中ミネラル(特にナトリウムイオン)が少ないときには

さらに低ナトリウム血症が悪化するので禁忌。

あと、何らかの理由

(途中で塊が詰まった!:尿路結石等)で

尿を出せない尿閉では禁忌。

体の外に尿を出せないのにどんどん尿を作らせては、

尿路のどこかで破裂してしまうかもしれません。

あと、急に腎臓の働きが悪くなった(急性腎不全)ときも、

さらに悪化させる危険性がありますから禁忌ですよ。

 

フロセミド(ラシックス)は腎臓の血流量を増やすことで、

糸球体でろ過される量(原尿量)を増やします。

ナトリウムの再吸収の邪魔もしますよ。

こちらはナトリウムイオンとカリウムイオンと

塩化物イオン2個との共輸送(Na⁺-K⁺-2Cl⁻)の邪魔です。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059390

腎臓の働きが多少弱っていても利尿効果は出ますので、

乏尿(1日尿量400㎖以下)や

無尿(1日尿量100㎖以下)でも使えます。

さすがに尿閉では効果が出ないことに加えて、

破裂危険がありますから禁忌ですよ。

血液中ミネラル不足(ナトリウムやカリウム)も禁忌。

これまたどんどん尿に出ていってしまうからです。

 

あともう1つ、肝性昏睡時も禁忌です。

肝性昏睡というのは、

肝臓が十分に働けないせいでアンモニアを尿素に出来ず、

血液中にたまったアンモニア等が悪さをして

昏睡状態に陥っていること。

肝臓の働きが悪いので、

血中タンパク質のアルブミンをうまく作れません。

アルブミン不足は、むくみ(浮腫)の原因。

血液中から組織(血管外)へ水がしみ出していくせいで、

むくみと体内循環量低下が同時に起こります。

「体内循環量は増やしたいのに、どんどん原尿に…。

再吸収しようにも邪魔されちゃってる…」

これでは悪化一直線です。

だから肝性昏睡時はラシックスが禁忌なのですね。

 

以上、各種利尿による降圧剤のおはなしでした。

尿に関するホルモンの働きも復習できましたね。

狭心症のところの

「血管を広げるお薬」のところも見ておくことを忘れずに!

次回から、低血圧のおはなしに入ります。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20221226更新)