8 各論3:体温(消化器系):小腸・大腸(2)大腸(2:下痢と便秘2)
下痢のときには「腸管保護」も大事です。
タンニン酸アルブミンをご紹介しましょう。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00009526
この薬は広がった腸管を適度に収縮させつつ、
表面に膜を張って粘膜を守ってくれます。
一般的な下痢に、広く使われますね。
禁忌は出血性大腸炎と牛乳アレルギーのある人。
出血性大腸炎は、
「O157:H7」に代表される病原性大腸菌による、出血を伴う大腸炎です。
ヒトの体に悪さをするのは、病原性大腸菌が作った毒素(主にベロ毒素)。
菌自体が悪さをするわけではないので、
抗生物質を飲んでも下痢はじめ症状は良くなりません。
しかも他の不具合が起こるリスク
(溶血性尿毒症症候群など)が上がってしまいます。
こんなときには、毒素(とそのもとになる菌)を
下痢で体の外に押し出してしまうしかないのです。
むやみに下痢を止めてはいけない理由です。
ウイルス性下痢の代表、牡蠣等によるノロウイルスも
同様に体外排出しかありません。
こちらは毒素ではなく、ノロウイルスの存在自体が
小腸上皮細胞をボロボロにしてしまいます。
とにかく「出してしまうこと」が全てです。
タンニン酸アルブミンの「アルブミン」は牛乳由来。
牛乳アレルギーのある人の体内に、
わざわざ牛乳タンパク質を入れてはいけませんね。
タンニン酸アルブミンの原則禁忌は細菌性下痢。
理由は…先程の出血性大腸炎のおはなしと同じです。
細菌を外に押し出す大事な手段を、止めてしまってはいけませんね。
では自律神経系異常の下痢だったらどうか。
腸管はじめ消化器系は、副交感神経系のコントロールを主に受けています。
大腸の腸管運動(蠕動)が活発すぎると、
水分を吸収する間もなく、便が通り過ぎていってしまいます。
ちょっと副交感神経系をお休みさせる必要がありそうですね。
こんなときに使うのがロペラミド(ロペミン)です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051670
副交感神経系副交感神経系の受容体に働いて、その活動を邪魔します。
結果、腸管の平滑筋が緩んで、水分を吸収する時間を作れることになります。
ちょっと補足しておきますね。
「腸管」と一言で言いましたが、小腸と大腸はかなり広いですよ。
いくら迷走神経が副交感神経系の消化管担当とはいえ、
やはり一人ですべてをこなすのは大変そうです。
だから、ヒトは腸管のコントロールを
神経の集まり(神経叢)にもしてもらうことにしました。
小腸と大腸の筋肉コントロール専門、アウエルバッハ神経叢です。
アウエルバッハ神経叢には、
迷走神経からの情報を受け止めるところがあります。
今回のロペラミドが働くμ受容体がその一例。
ロペラミドの副作用に嘔吐や口内乾燥といった
消化器系抗コリン作用が出ることからも、
迷走神経(副交感神経系)との関係が分かるはず!
ロペラミドは、「オピオイド受容体作動薬」とも呼ばれます。
オピオイドは、鎮痛・陶酔作用を持つアルカロイドと呼ばれる化合物のこと。
ケシの実由来の天然物から、人工的に作ったもの、
ヒト体内で作られているものまで多くの物を含む言葉です。
これについては、「呼吸」ブロックの中枢…
多分、麻酔のところで出てくるはずです。