2 性感染症(STD)のおはなし(7)
TORCHのO(その他)シリーズ。
今回はHIVですが…
HIVって、生化学の血液のところでおはなししましたよね。
「12 血液」のところ。
もっと言うなら、「白血球の指揮命令役、T細胞に感染する」ところです。
免疫の話が分からないとその怖さが実感しにくいので、
ぜひ生化学「12 血液」を読んできてください。
https://5948chiri.com/bioc-12-5/
では、ここでは何についておはなしするのかというと。
性感染症としてのHIVについてです。
もっというなら「医療職になった後の感染恐怖としてのHIV」でもあります。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染経路は、
血液感染、性行為等による(粘膜)接触感染、母子感染です。
一時期薬剤感染が問題になったことはご存知の通り。
「薬害エイズ訴訟」というのがその結果ですね。
薬剤社会はじめ存在と知識が広まった以上、
今後「薬剤感染」は出ない…はずです。
すると、今後の感染を考える上では、
血液と性行為、母子感染が問題になってくるのです。
性行為感染は男女間に限りません。
男性同士でも粘膜接触はできますから、
そこからHIVが感染していきます。
わざわざ「粘膜接触」と書いたのは、
一般的な『接触』のイメージから
皮膚を触れただけでも感染すると誤解するといけないからです。
このイメージによる誤解で、
一時期のHIV感染者はひどい扱い(不当差別等を含む)をされました。
…下手をすると、まだひどい扱いをされているかもしれません。
皮膚はとても丈夫・優秀な身体防壁。
HIVは「切り傷があるところに感染者の血を塗りたくる」ような
特殊状態にならないと感染できません。
でも、粘膜は傷つきやすいうえに皮膚のような防御力はありません。
傷があり、粘膜…となると、少しのHIVでも感染できるのです。
だから「粘膜接触」の機会として、性行為が問題なのです。
HIV予防にはコンドーム。
いつもと、何も変わりませんね。
あとは母子感染のような「ある種不可避」な感染を除けば、
日常生活内でHIVと会う機会はないはずです。
『薬物の注射針使いまわし』も感染経路ですが、
現在の日本で、それが「日常生活」とはいえないはずです。
例外は医療職。
医療職…特に医師と看護師は「血液」に触れる機会があります。
血液中にはHIVがいます。
これが直接体の中に入ってきてしまう機会が「針刺し事故」ですね。
ここは少々おはなししたいので、
次回は「針刺し事故」のおはなしをしますよ。