6 筋骨格系のおはなし(4)
今回は、筋肉の増えるときと減るときについてのおはなし。
どんなときに、筋肉は増えるでしょうか。
「筋トレ」という言葉を思い出すと、
筋肉を使うことは、筋肉を増やす方向に働きそうですね。
この「筋肉を使うこと」は「適度な負荷」といいます。
ジムに通わずとも、地球上で普通に生活しているだけで
「適度な負荷」がかかった状態です。
ここ、今は何気なく読み飛ばしてもかまいませんが…
筋肉が減るときのおはなしではしっかり思い出してください。
当然のことながら、筋肉が増えるためには
筋肉の材料になるタンパク質が必要ですね。
あとは、ホルモンの働きも重要。
とくに成長ホルモンは分かりやすくていいですね。
成人してからも、成長ホルモンは出ていますよ。
子供のときのような分泌量ではありませんが、ね。
「寝る子は育つ」で知られる、
夜間(就寝中)に分泌量が増えるのが特徴です。
では、逆の質問。
どんなときに筋肉は減るでしょうか。
さっきの逆…
ホルモンがなくて、材料がなくて、負荷がないときだ!
そうですね。
もう少し詳しく見ていきますよ。
「負荷がない」の代表例は、宇宙帰りの宇宙飛行士。
皆さん、地球に戻ってきた直後は
椅子に座ってインタビューを受けていますよね。
これは宇宙での生活で
筋肉が衰えた(筋肉量が減ってしまった)から。
いくら宇宙滞在中に筋トレをしていても、
筋力低下が起きてしまうのです。
地球の重力が、
どれだけ筋肉にとって「負荷」となっているかが分かりますね。
「地球上で普通の生活」を送っていれば、
筋肉維持のための負荷としては十分です。
「普通」ではなかったら、
負荷不足で筋肉が減ってしまいます。
具体例としては「寝たきり」ですね。
病気や怪我等で適切な安静は確かに必要。
でも安静を要しない場所があるなら、
できるだけ動かしてください。
さもないと病気や怪我は治ったのに、
「筋力が低下したせいで動けない寝たきり」になってしまいますよ!
負荷があっても、
材料となるタンパク質が不足してしまっては
筋肉は減ってしまいます。
飢餓状態をイメージしてみてください。
食べ物がない…というとき、
体の中は蓄えておいた脂質や貯蔵型糖質を使ってATPを作ります。
それらもなくなったら…
タンパク質までがATPのもとにまわされてしまいます。
これが「クワシオルコル」と呼ばれる状態。
血液中のアルブミンも、ATPのもとに。
だから浸透圧が保てず、体中がむくんでしまいます。
腹水がたまって、おなかだけ膨れてくる…
典型的なクワシオルコルです。
筋肉のタンパク質もなくなってしまったら。
いよいよ「骨と皮だけ」の状態になってしまいます。
これが「マラスムス」。
もう消化器系もまともにうごけません。
…ここまで極端ではありませんが、
一般的な筋量減少を起こすものをまとめて
「サルコペニア」といいます。
原因は加齢をはじめ、
栄養減少、疾病等によるものなど多岐にわたります。
「寝たきり」もサルコペニアの一因です。
問題は、筋肉量が減ることそれ自体ではなくて
「日常動作ができなくなる」ことです。
筋肉が生命維持にどれだけ大事か…
は呼吸筋1つとっても分かりますね。
しかも「ただ生きる」だけではなく、
「良く生きる」ためには筋肉を適度な量で保っておく必要があります。
問題が起きてからではなく、起きる前に予防対策です。
とはいえ、難しくありません。
だって「地球上で普通の生活」をしていれば、
負荷の心配はいりませんからね。
あとは食事によるタンパク質の供給を忘れずに!
適度な運動も追加できれば、さらによし!ですね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221011更新)