7 生殖器系のおはなし(11)
妊娠初期の、脊椎動物共通部分の発生のおはなしです。
外胚葉由来の神経管が、
受精してから2週間ぐらいで脳と脊髄に分かれてきます。
前の方の膨れてきたところが脳になり、
後ろの細いままのところは脊髄です。
…はっきりいって、
この段階ではどの動物か見分けが付きません。
受精して5週間くらい経つと、
目のもと、手のもと、足のもとができてきます。
脳は「前脳・中脳・後脳」の3区分から
「終脳・間脳・中脳・後脳」の4区分に。
終脳は大脳になり、後脳は小脳と延髄になります。
この段階では、
後脳(小脳と延髄)が一番太く発達していますよ。
8週間くらいになると
「ヒトだ!」と分かるようになります。
頭でっかちですが、手も足も指が分かれていますね。
…と、いうことは。
ここまでに何かが起こると
「ヒトの形が保てない」ということです。
TORCHによる先天異常、
染色体振り分けミス等による
異常などをおはなししてきましたね。
あと、ここでは放射線による異常も追加しておきましょう。
毎度おなじみですが、
ここでおはなしするのは発生の理解に役立つところだけです。
単位をはじめとする細かいおはなしは専門書等にお任せします。
放射線による異常というのは、
突き詰めるとDNAに対する異常になります。
「DNAに傷がついて
細胞分裂までに直しきれない…!」ですね。
その結果正しい情報が伝わらず、
できたタンパク質の立体構造が変で
正常に機能しないことへとつながります。
生化学のタンパク質と、
DNAのおはなしを一気に復習しているようなものです。
他の生物の受精卵に放射線を当てた実験では
受精から1週間以内に
100mGy以上の放射線を浴びると受精卵が死んでしまいます。
「着床準備ができない≒新しい生命生存不能」ともいえます。
それ以降受精8週までに
100mGy以上の放射線を浴びると体のどこかに奇形が出ます。
細胞分裂をしてちょうど作っているところで
正しい情報が伝わらなくなったせいですね。
「放射線治療では小腸・舌・赤血球がおかしくなる」、
これは癌の放射線治療時の看護で必要になる前提知識です。
でも…ここまで勉強してきた皆さんには簡単ですよね。
ええと…放射線でおかしくなるのは細胞の核の中にあるDNA。
細胞分裂までの間隔が短いと、DNAのお直しが間に合わない。
生まれ変わりが早い小腸上皮細胞、味蕾、赤血球は
細胞分裂が頻繁に起こるから、
お直しが間に合わなくて
変な細胞やタンパク質ができておかしくなる…。
そうか!
だから味覚変化に伴う食行動変化、
栄養吸収不良、貧血が要注意になるんだ!
大変よくできました。
「細胞分裂しているところに放射線は大ダメージ」の意味、
発生の側面と癌治療副作用の側面から理解できましたね!
【今回の内容が関係するところ】(以下20221025更新)