8 各論3:体温(消化器系):口から十二指腸(2)食道・胃・十二指腸(2)
胃酸(塩酸:HCl)に必要な水素イオン(H⁺)を提供する
プロトンポンプを邪魔する薬として、オメプラゾールを見てみましょう。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059629
薬自身に対する過敏症は、他の薬でもおなじみの禁忌ですが。
抗HIV薬のアタザナビル硫酸塩と
リルピビリン塩酸塩が禁忌になっていますね。
抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬すべてではなく、
アタザナビル硫酸塩とリルピビリン塩酸塩だけが禁忌になる理由。
それはこの薬がpH依存で溶ける薬だからです。
胃酸がちゃんと出ている(強酸性)環境で溶けないと、
小腸でちゃんと吸収してもらえません。
だから胃酸を作るところを直接邪魔するオメプラゾールを飲んでいたら、
吸収不十分を起こして困ってしまいますよ。
では「プロトンポンプを動かす命令」を受け止めるところに働くお薬はどうか。
ガストリンは、胃酸を出させるホルモンでしたね。
ガストリン受容体をブロックする
プログルミド(プロミド)というお薬はありますが、少々働きが弱め。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00053971
副作用に便秘・口渇といった消化器系症状があります。
…なんだか「抗コリン作用」が気になりますね。
抗コリン作用がストレートに出るものがM1ブロッカーのピレンゼピンです。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065693
「M1受容体」ときいても、何だかピンときませんね。
副交感神経系の受容体について簡単に紹介しておきましょう。
交感神経系の受容体にはα1、α2、β1、β2があって、
いる場所も働きも違いましたよね。
同じように、副交感神経系の受容体にも種類があります。
まず、ニコチン受容体とムスカリン受容体に大きく分けられ、
さらに中が細かく分けられます。
今確認しているムスカリン受容体には、M1からM5まであります。
M1受容体は、脳と分泌腺、交感神経系で働く受容体。
だから、M1受容体をブロック(邪魔)すると、
分泌腺から胃酸が出ることが止まる(もしくは減る)のです。
M1ブロッカーの意味が分かったところで、ピレンゼピンのおはなし。
「禁忌」ではありませんが、
慎重投与のところに緑内障と前立腺肥大症の文字が見えますね。
副交感神経系の受容体の1つをブロックしたので、
交感神経系優位になります。
交感神経系優位のとき、これらは悪化しやすい病気でしたね。
「どうしてそうなるのか」については、
低血圧(昇圧薬)のところでおはなししましたよ。
当たり前のことですが、副作用は抗コリン作用ドンピシャです。
副交感神経系の神経伝達物質アセチルコリンが
はまるところを邪魔しているから…ですね。