10 核酸・遺伝子のおはなし(10)
「ヘテロ」という言葉は、
生物を勉強してきた人には懐かしい響きかもしれませんね。
今回は、ヘテロの観察対象をヒトにしぼっておはなししますよ。
私たちは設計図(DNA)を両親から受け取っていますね。
この受け取った設計図は、だいたい同じことが書かれていますが、
よく見ると微妙に違うことがあります。
この微妙に違うところ、どちらを選んで組み立てるかが気になるところです。
このときに「片方の設計図にあったら優先!」という情報を親から受け取ることを、
「優性(遺伝)」といいます。
代表例は目の光彩(絞り)の色。
日本人は暗い色(暗褐色等)ですが、海外では青や緑など薄い色が多いですね。
実は日本人の暗い光彩の色は光を遮るカーテンとして優秀な色。
光彩の働きは「必要以上の光が網膜に届くことを防ぐ」ですから、
「光彩が暗い色」は親から受け取ったら即採用!
これが優性です。
「どちらもそろわないと採用しないよ」というのは「劣性」。
「劣る(おとる)」の文字が使われているのは、
「設計図情報として採用されにくい」という意味です。
先程の光彩なら薄い色(青や緑)ですし、まぶたの一重も劣性情報です。
そして特定の設計図の部分を見たときに
「どちらもそろった」状態を「ホモ」と呼びます。
「そろってはいない(片方は違う)」状態を「ヘテロ」と呼びます。
先程の例を使うなら、
「暗い色の光彩はヘテロでも現れる。
薄い色の光彩は、光彩の遺伝子情報がホモの関係にないと発現しない」となりますね。
前回の鎌状赤血球症で理解するなら、
「鎌状赤血球の設計図がヘテロなら、マラリアに強い。
ホモの関係だと、
貧血が強すぎてマラリアには強くても細胞が酸素不足で生きていけない」です。
ホモというのは「均一・均質」を意味する言葉。
実験等で撹拌することを「ホモジェナイズ(均質化)」と呼ぶのはこのためですね。
細胞の設計図の分野では「同じ情報だね!」とイメージしてください。
今まで「父方と母方からほぼ同じ設計図」を得る前提でおはなししてきました。
片方からしか得られない設計図があること、気付きましたか?
そう、性染色体。
特に男性が父方から受け取るY染色体は、
母方から「ほぼ同じ設計図」を受け取ることができません。
だからY染色体に書いてある情報は、劣性でも即採用です。
また、男性のX染色体上の情報も「即採用」になります。
そこにちょっとおかしい情報がのっていると…即・発症です。
その代表例が「血友病」です。
少々長くなりますので、ここから先は次回!