4 血糖と糖尿病のおはなし(6)
前回までで、糖尿病の三大合併症についておはなししました。
持続的な「高血糖」がいかに体にとって悪いか、分かってきましたか?
問題になってくるレベルの「高血糖」は、どれくらいでしょうか。
皆さんは正常血糖値を見てきましたよね。
それを超えたからいきなり「糖尿病!」ではありません。
日本では現在複数の条件から糖尿病の診断をしています。
まず長期的血糖変動を示すヘモグロビンA1cがいましたね。
この「★ヘモグロビンA1cが6.5%以上」だとリーチ。
ここに
「①いつでもいいから採血したら200mg/㎗以上だった!」か
「②人工的に食後環境を作り出すOGTTで200mg/㎗以上」、または
「③空腹時血糖が126mg/㎗以上」だと糖尿病診断が出ます。
★だけや、数字だけ(①②③がいくつあっても)だと、再検査です。
…数字だけでも網膜症が出ていたらアウトですよ。
あれ?
「空腹時も高血糖で尿に糖が出る」って言っていたのに、
それは診断基準じゃないの?
はい、少なくとも現在は合わせ技で判断していますので
その説明は診断基準そのものではありません。
でも、分けて考えてみましょうか。
『空腹時も高血糖』は空腹時血糖が126mg/㎗以上と考えれば、
基準の1つといえます。
『尿に糖が出る』は腎臓の糖再吸収能力の限界を見てみましょう。
正常な腎臓にとって再吸収が追い付かなくなる血糖値のラインは
180mg/㎗以上とされています。
ただ170mg/㎗でも尿に糖が出る人もいますし、
180mg/㎗ぎりぎりまで尿に糖が出ない人もいます。
この「170~180mg/㎗」は「閾値」と呼ばれます。
「いきち」「しきいち」どちらの読みもありますね。
…この数字、どこかで見ませんでしたか?
そう、食後1時間たった後の血糖値です。
食後1時間前後では、正常な人でも尿に糖が出てきます。
これ自体は、血糖の変動を思い出せば不思議なことではありませんね。
しかも、それ以外の要因でも尿に糖が出ることがあります。
例えば、腎臓の調子が悪いと
血糖値は高くないのに尿に糖が出てしまいます。
これは「腎性糖尿」といって、糖尿病ではありません。
だから、「尿に糖が出た」だけでは糖尿病ではありませんね。
でも、さすがに診断基準の「200mg/㎗以上」なら尿に糖が出そうです。
そんなわけで。
みなさんに最初に紹介した
「糖尿病は空腹時も高血糖で尿に糖が出るもの」は、
この診断基準から大きく離れたものではないのです。
ヘモグロビンA1cと合わせ技にする理由も…分かりますよね。
「直前の食生活緊急改善!」で
糖尿病の人が基準をすり抜けてしまうことを防止しているのです。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220313更新)