5 タンパク質のおはなし(3)
タンパク質の立体構造について分かってきたので、
今回はその例からスタート。
タンパク質の4次構造を理解するのに、
ヘモグロビンはとても役に立ちます。
これ、血糖値のところで出てきた名前ですね。
お待たせしました。
「ヘモグロビンA1c」の、
ヘモグロビンについてのおはなしです。
ヘモグロビンは、
3次構造のユニットが4つと、
円盤状のヘムが4個でできています。
3次構造のユニットは
αユニットが2つ、βユニットが2つ。
これが酸素とゆるーくくっつき、
全身の細胞に酸素を運ぶために
一番役割を果たせる(機能的な)形なのです。
3次構造の立体構造が集まって、
役目を果たせるようになったのが4次構造。
4次構造と言われたら、
ヘモグロビンの姿を思い出してあげてくださいね。
タンパク質は立体構造が大事。
そのことを思い知らせてくれるのが「変性」です。
変性とは、タンパク質の形が変わったせいで
性質が変わってしまったこと。
一番いい例が、卵の白身です。
生の白身は、透明でぷるぷるしていますね。
でも加熱すると…白く不透明に変わってしまいます。
これ、熱によって
タンパク質の立体構造(3次構造)が変わってしまったため。
SS結合が外れてしまったところ、イメージできましたか?
このように、ちょっとしたことでタンパク質の立体構造…
つまりタンパク質の性質は変わってしまいます。
そこをうまく利用したものが「殺菌」や「滅菌」です。
細菌も細胞。
細胞膜にはタンパク質が埋まっています。
タンパク質を変性させてしまえば、
細菌は増えるどころか生きていくこともできません。
ただ…敵もさるもの。
細菌の種類によっては
100℃くらいじゃタンパク質を変性させられません。
細胞壁のガードがやたらと硬いものがいるのです。
しぶとい細菌の例として「芽胞を作る菌」があります。
これは何と宇宙空間でも死なないような
耐久形態「芽胞」を作ります。
ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできません。
だから、こんな菌を変性させようとしたら、
こちらも最終手段クラスを用いねばなりません。
薬品なら、グルタルアルデヒドです。
これは芽胞菌にも効果のある薬品ですが…
当然、ヒトの皮膚には使えません。
だって、ヒトの皮膚も細胞。
あっという間にタンパク質変性を受けて、
皮膚の細胞がおだぶつになってしまいます。
だから、グルタルアルデヒドは便利ですが、
ヒトには使えません。
このようにタンパク質変性を
うまく利用するのが「殺菌」や「滅菌」。
もちろん前提になっている
「細胞膜にはタンパク質が埋まっている」ことや、
「タンパク質は形が変わると働きが変わる」ことを
忘れちゃだめですよ!
【今回の内容が関係するところ】(以下20220326更新)