8 脂質代謝のおはなし(5)
脂質代謝はATPを作って終わり、ではありません。
脂質から他のものができることも、
立派な代謝(同化、ですね)です。
ここでは、
脂質からできる炎症物質についておはなししましょう。
最初に注意。
ここから、いろいろな炎症物質の名前が出てきます。
でも炎症物質それ自体は悪いものではありません。
細胞や組織のレベルで見れば、
「なんか変なこと起こってる!
お願い!早く治して!」というサインを
体の防衛担当の白血球に送っているだけです。
だけどその結果、私たち(ヒトレベル)には
都合の悪い状態が生じてしまいます。
炎症…発赤・腫脹・疼痛・発熱ですね。
ようするに「赤くなって」「腫れて」
「痛くなって」「熱をもつ」、
これが炎症で、
この状態を引き起こすのが炎症物質です。
さて、これら炎症を引き起こす炎症物質はたくさんあります。
ありますが…
ここではアラキドン酸からできる炎症物質に注目。
「アラキドン酸から」と書きましたが、
実は他の脂肪酸
(EPA:エイコサペンタエン酸…などなど)からも
炎症物質は作られます。
でも、アラキドン酸からできる炎症物質が多いので
ここでは「アラキドン酸から」としておきますよ。
しかもアラキドン酸から炎症物質ができる一連の流れには、
「アラキドン酸カスケード」という
かっこいい名前もついています。
さて、アラキドン酸自体については説明済みですね。
必須脂肪酸の3つのうち1つでした。
本によっては必須脂肪酸に含まれない理由も、
脂質のところで説明してありますよ。
そんなアラキドン酸の普段の居場所は細胞膜。
炎症物質が必要になると、酵素の働きで形が変わります。
シクロオキシゲナーゼという酵素が働くと、
プロスタグランジンや
トロンボキサンという炎症物質ができます。
リポキシゲナーゼという酵素が働くと、
ロイコトリエンという炎症物質ができます。
プロスタグランジンの働きは血管を広げること。
血管が広がれば、
白血球が集まって組織へ移動しやすくなります。
トロンボキサンの働きは、
血小板を集めてくること。
そしてロイコトリエンの働きは白血球の誘導・活性化です。
…働きをまとめると、
「『なんか変だ!』と細胞から要請入った!
防御部隊の白血球、現場に急いで!
出血あるかもしれないから、止血担当の血小板も早く!」
…炎症物質、何も悪いことしていませんね。
でも、ヒトレベルでこれらを見ると
「痛い!腫れてるし赤くなってる!
しかもなんか熱い!」になります。
目に見えるところならまだ分かりますが、
内側の見えないところだと「ただの痛み」です。
だから私たちは痛み止め
(消炎鎮痛剤)のお世話になるのです。
なぜ痛みが止まるのかは、次回おはなししますね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220502更新)