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2 薬に共通するおはなし(1):吸収(A)の応用(1)

2022年11月8日

前回、飲み薬で基本についておはなししました。

でも、薬って飲んでもしばらく効きませんよね。

それもそのはず。

「小腸で吸収」されるには、それなりの時間がかかります。

飲んですぐ「シャキーン!」と効果が出たら、

それは「薬を飲んだ」という認識に基づく

プラセボ効果(偽薬効果)かもしれません。

たとえプラセボ効果であっても、

すぐに不具合(変!)が正常に戻ればいいのですが、

普通は、そううまくは行きませんね。

 

「一刻も早く効いて!」というときには、

薬の「吸収」のところに工夫が必要そうです。

 

例えば、狭心症の薬のニトログリセリン。

心臓が止まったら、ヒトは死んでしまいます。

全身に血液をめぐらせるポンプが止まってしまうと、

全身の細胞が酸素と栄養分不足で

ATPを作れなくなるからですね。

ポンプの役目を果たすのは、心筋(心臓の筋肉)。

そこに血液を届ける冠状動脈は、

他の動脈との吻合(つなぎ目)がなく、責任重大です。

その心臓の動脈が各種事情によって

一時的に十分な血液を送れないほど

狭くなってしまったものが、

「狭心症」ですね。

 

「一時的」ではありますが…

確実に全身細胞にとっては「大ピンチ!」です。

一刻も早く何とかする必要がありますね。

だから、狭心症の薬ニトログリセリンは「舌下錠」です。

 

舌下錠というのは、飲み込むのではなく、

舌の下において、だ液でじんわり溶かす薬の形。

口腔粘膜から吸収させるメリットは2つ。

「小腸で吸収されるまで待たなくてよい」ことと、

「肝臓での初回通過効果を受けない」ことです。

 

吸収されるまでの時間については、

イメージできますよね。

「肝臓での初回通過効果」というのは、

小腸で吸収されたものは

肝臓でまず分解される…ということです。

前回、肝臓に門脈から血液が流れ込む理由を復習しましたね。

そのときには

「栄養を必要な形に合成すること」とおはなししました。

「合成」には、「分解」の側面もあります。

そして薬では分解の側面が強く出ます。

「薬が壊される」ということは、

「薬の効果が弱まる」ということですね。

狭心症の薬の効果が弱まって、

狭くなった血管の広がりが弱まったら、

大ピンチをうまく解消できません。

 

だから、狭心症の薬ニトログリセリンは

初回通過効果を受けない舌下錠として使われるのです。

 

初回通過効果を受けない吸収方法のおはなしは、

もう少し続きますよ。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20221108更新)