10 脳神経系のおはなし(1)中枢の基本構造と血管異常(8)

C 脊髄血管障害

脳だけでなく脊髄でも血管障害は起こります。

脊髄の前(腹側)で起こるか、

後ろ(背側)で起こるかによって症状が変わります。

 

前脊髄動脈症候群では、

各種出血・閉塞により対麻痺が起こります。

対麻痺というのは、両下肢の麻痺のこと。

同時に温痛覚がなくなりますが、

触覚と深部知覚は残ります。

場所が頚髄付近の場合には

四肢麻痺になることもありますね。

四肢麻痺は

四肢(両手両足)が麻痺してしまうことですね。

 

後脊髄動脈症候群も原因は一緒ですが、

急な背部痛で対麻痺と膀胱障害が起こります。

こちらは温痛覚が残りますが、

触覚と深部知覚がなくなってしまいます。

後脊髄動脈症候群はごくまれにしか起こりませんので、

前脊髄動脈症候群を理解しておきましょうね。

 

脊髄の前側は運動命令の出力、後側は感覚の入力。

しかも「表在感覚と深部感覚の入力は、

ちょっと脊髄をまたぐ位置が違う」とおはなししましたね。

その「またぐ位置の違い」が、

(前と後の)脊髄動脈症候群の

残存感覚の違いにつながっているのです。

 

(3) 脳脊髄液閉塞

血液だけでなく、脳脊髄液も

脳・脊髄を圧迫してしまうことがあります。

水頭症は、何らかの原因で

脳脊髄液の循環・吸収障害を起こして

脳室の過度な肥大が起こったものです。

脳出血やくも膜下出血で出てきた合併症の1つですね。

 

脳脊髄液は脳圧をコントロールし、

脳に栄養因子やホルモンを運び、

老廃物を排泄する約150mℓの液体。

4つある脳室をめぐり、

脊髄の外側をめぐってくも膜から吸収されていきます。

 

脳脊髄液の流れが悪くなったものが「非交通性水頭症」。

小児や炎症後等の閉塞性癒着、腫瘍等で起こります。

頭痛、嘔吐が出ますが、

急に悪化することがあるので要注意です。

脳脊髄液の作成や吸収が「変!」になったものが

「交通性水頭症」。

原因が特定できないものは「特発性」、

原因があるものは「二次性」。

二次性交通性水頭症は、

主に髄膜炎、くも膜下出血、くも膜機能不全が原因です。

特にくも膜下出血では、

出血後1~2か月後に、約3割で発症するとされています。

 

症状は歩行障害、尿失禁、認知機能低下等が見られ、

特発性交通性水頭症では

単なる老化と見過ごされてしまうこともあります。

 

脳脊髄液の圧力を減らすためには、

外科的に通路(シャント)を作り、

体腔内に脳脊髄液を出してあげることになります。

年少者ではこのシャントがつまりがち(シャント閉塞)。

易刺激性、食欲低下、睡眠障害等が出たら、

閉塞の可能性を疑ってください。

 

脳脊髄液の還流障害が脊髄で起こったものが

「脊髄空洞症」。

脊髄腫瘍や脊髄くも膜炎でも起こります。

原因として代表的なのは

先天性の「キアリ奇形」。

小脳下部が脊柱管内に垂れ下がり、

嵌入してしまう先天異常です。

上肢のしびれ、疼痛、歩行障害、巧緻障害が出てきます。

巧みで、緻密な動きが障害されるものが「巧緻障害」。

ボタンをかける、字を書くなどが

うまくできなくなってしまうことですね。

キアリ奇形なら、外科的に減圧術がとられます。

水頭症も合併しますので、シャントもですね。

それ以外の(後天性の)ものは、多くが経過観察対象です。