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11 精神のおはなし(2)双極性障害、統合失調症、物質使用障害、ストレス障害(1)

1 双極性障害

前回ちらりと名前の出た双極性障害(躁うつ病)は、

双極性感情障害とも呼ばれます。

著しく気分が高揚する病相(エピソード)と、

意欲が低下して憂鬱になる病相の、

両病相を繰り返す精神疾患が、双極性障害です。

 

遺伝的素因と身体要因と心的要因が関係している点では、

うつ病と同じですね。

抑うつ病相については、

先程おはなしした「抑うつ状態」と同じ。

そう病相は、「高揚気分」と「イライラ・易怒性」が

主になる状態(そう状態)です。

単なるハッピーな気分(高揚)だけではなく、

怒りやすさやイラつきが出てくることもお忘れなく。

これは外部に対して怒り・イラついているだけではなく、

自分の内部感情・感覚に十分についていけないがゆえの

怒り・イラつきも含まれます。

 

他にも出てくる症状は

「自分が偉くなったように感じる(自尊心肥大)」、

「眠らなくても平気(睡眠欲求減少)」で、

「すごい勢いで話し続ける(多弁)」、

「次々と考えが浮かんできて

思考がまとまらない…(観念奔逸)」状態です。

さらに「いろいろなことに関心が向くけど

持続しない(注意散漫)」、

「疲れが分からず、

動くのが止まらない(活動増加)」が見られ、

「一度買いだしたら止まらない…

(困った結果になる可能性が高い快楽的活動への熱中)」

等も出てきます。

そう状態では自己の消耗だけでなく、

経済的消耗も心配ですね。

他にも妄想のうち誇大妄想が出やすくなります。

 

治療の方向性は「うつ状態を治し」「そう状態を治し」

「再発を予防すること」。

これらすべてに共通する薬が気分安定薬のリチウムです。

リチウムは具体的に

どこの神経伝達をどのように邪魔しているのかについては、

よく分かっていません。

ナトリウムイオンやカリウムイオンといった

電解質に作用する可能性があるので、

神経細胞の情報伝達全般に

(抑制的に)作用しているのでは、と考えられています。

実際に使用すると、多少効き始めるまでに時間はかかりますが、

そう病相とうつ病相のどちらの状態も改善されます。

 

ある種便利ではありますが…

中毒症状は重いので、血中濃度には要注意です。

具体的には消化器系症状は嘔気、嘔吐、下痢。

循環器系症状は血圧低下、不整脈、

T波が陰転化する心電図異常。

泌尿器系症状として乏尿、尿崩症、アシドーシス。

中枢神経系症状は意識障害、発語障害、嚥下障害、

知覚障害、ミオクローヌス、筋力低下。

他にも甲状腺機能低下等が起こってきます。

血中濃度が高くなり、

これらの症状が出始めたら一刻も早く報告を!

あとは気道を確保し、酸素療法の準備を始めてください。