11 精神のおはなし(2)双極性障害、統合失調症、物質使用障害、ストレス障害(7)
個別に薬物の補足。
大麻は中枢神経を抑制する方向に働きます。
アルコールと同じ方向性ですね。
使用後朦朧(もうろう)状態に陥るため、
本人の安全(もちろん周囲の安全も)に
配慮する必要があります。
これに対して覚せい剤は中枢神経興奮系。
心身の抑制を無視するほどの興奮を生じさせる結果、
「性欲等の快刺激助長」を引き起こします。
急性中毒には興奮や意識障害を伴う錯乱も出てきます。
使用後数日で出てくるのが「反跳現象」。
アルコール離脱症状と同様の、
脱力、疲労、抑うつ気分、過食、嗜眠が出ます。
「離脱」さえしなければこれらの症状は出ません。
だから「やせる薬(食欲を抑えられる薬)」や
「疲れない薬」とされて
薬物使用が蔓延する原因にもなります。
そして助長された「快」に慣れてしまえば、
元の状態は「不快」ですから、依存へと一直線です。
慢性化すると少量の再使用でも再燃するだけでなく、
ストレス、疲労、飲酒でも再燃(自然再燃)を起こし、
社会機能が低下した状態で固定してしまいます。
この覚せい剤に似た成分を、
適当な植物にしみこませたものが「ドラッグ」。
頭にどんな文字が付いていようが、
全て「覚せい剤作用を有するもの」です。
シンナーに代表される有機溶媒も、
薬物依存を引き起こします。
慢性中毒で幻覚・妄想が出てきますので、
社会機能が著しく害されますね。
医療機関から処方された薬も、
使い方を間違えれば立派な依存症薬物。
意外なほど身近にある鎮咳薬(せきどめ)が
乱用で依存症を引き起こします。
咳止めの主成分は、
大麻等に含まれるアルカロイド
(もしくはそれに似た形のもの)。
咳中枢を麻痺(抑制)させて咳を止めていることと、
アルコール使用障害の基本メカニズムを思い出せば、
納得できますね。
呼吸中枢のおはなしのところで、
咳中枢についても簡単におはなししてありますね。
4 ストレス障害
アルコールに代表される
依存症についておはなししてきましたが。
アルコールを用いてまで精神の働きを麻痺させたいほど、
ショックな出来事が起こりうるのも事実です。
ヒトの心と身体は、
ストレスに対しての防御機能を備えています。
ゴムボールをイメージしてください。
ストレスは、そこに外側からかかってくる力。
力がかかったときにすぐにつぶれないように、
ヒトは各種ホルモンを出して抵抗力を上げます
(つぶれないように内圧を上げる)。
やがて外側からの力がなくなれば、万歳。
これが「ストレッサー学説」と呼ばれる防御機能です。
でも、ホルモンが働く前に突発的に大きな力が働いたら、
ぺちゃんこです。
また、外側からの力がかかり続けたら、
抵抗力を維持できなくなって
こちらもぺちゃんこに凹んでしまいます。
そんな状態で精神(と身体)に生じてくるものが
「急性ストレス反応」と
「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」です。