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11 精神のおはなし(3)3大欲求障害、時期・段階に特徴的な障害(4)

そして入院中にオペラント条件付けによる

入院行動療法等を行い、

体重が40kgほどまで回復したら外来で通院しつつ、

修正認知行動療法等をしていくことになります。

目標は、本人が体重を回復させる決意をすること。

メリットは何かを、

うまく情報提供できるといいですね。

治療がうまくいけば、

約1年で30kgから50kgへと回復でき、

月経が回復することもあります。

10年後には、約6割が正常の体重に戻れるようです。

ただ、無茶食いが併存しているときには、

10年後の正常化は約3割にとどまります。

さらに過食に移行してしまうと、

長期・慢性化してしまう傾向にあります。

 

神経性大食症は、自制不能な無茶食いを繰り返し、

その後嘔吐、下痢、利尿剤、絶食等の

「食べたものを排除しようとする

対償行為(排出行為)」を病的に行う疾患です。

身体的因子と心理的因子、社会的因子に

誘発因子のストレスで発症すると考えられています。

先程おはなしした

神経性やせ症から移行することもあります。

 

結果として出てくる症状は、

脱力、便秘、下痢、嘔吐、歯痛など。

歯痛は、嘔吐によって出た胃酸による刺激。

嘔吐はそれ以外にも逆流性食道炎や

代謝性アルカローシス、低カリウム血症の原因です。

下剤による下痢も、

脱水や代謝性アシドーシス、低カリウム血症を引き起こします。

脱力は嘔吐や下痢による脱水と低カリウム血症が原因です。

他にも高血糖や脂質異常症、

月経不全や不妊が出てくることもあります。

治療には「こころ」の変化をうながす

非薬物療法が用いられます。

正しい情報を提供し、

三食摂取の必要性を理解してもらう「心理教育」。

食べたい衝動を歯磨き等の代替行動で

コントロールする訓練等の「認知行動療法」。

食行動の異常に目を向けるのではなく、

ストレス原因の対処に注目する

「対人関係療法」などがあります。

約半数は、5~10年で回復できますが、

約2割は変化なく年月を重ねてしまいます。

 

(3)性欲障害

基本的欲求のトリは「性」について。

ここでは「性同一性障害」と

「性機能不全」についておはなししますね。

 

性同一性障害は、

生物学的な性と自己の性意識が一致しないもの。

反対の性や役割分担を望む感情レベルから、

ホルモン療法や外科治療をしてでも

反対の性になりたいレベルまで多様な段階があります。

心理社会的要因と生物学的な要因が関係していますが、

詳細は不明です。

中核にあるのは、

「自分の性やその役割に対する持続的不快感・不適切感」と、

「反対の性への強く、持続的な同一感」です。

そのせいで違和感や嫌悪感を日々生じるだけでなく、

日常生活や社会でも「反対の性役割」を

担うことが多くなります。

各種精神的苦痛から、不眠・うつ病・摂食障害・

アルコール依存症も合併しやすい傾向にありますね。

 

入り口かつ基礎になるのは精神的治療。

精神的サポート、カムアウトの検討、

実生活体験等ですね。

「それでも反対の性になりたい!」という

強い希望があるなら、ホルモン療法や

切除・性別適合手術等の身体的治療が

行われることもあります。

でも、この「身体的治療」を行う医療機関は少なく、

保険の適応外というのが現実です。

だから治療は主に

「どうやって社会に適合していくか」になります。

本人の希望を第一に治療目標を設定してしまうと、

残念ながら望むような成果は得られないと思います。