12 末梢神経のおはなし(2)聴覚・触覚と皮膚(前半)(6)
(3)皮膚掻痒症、乾燥性湿疹、角化症
かゆみが出たとき、皮膚に異常サインが出て、
原因が分かればいいのですが。
皮膚掻痒症では、
原因が見当たらぬまま強いかゆみが出ます。
全身性と局所性があり、
どちらも中年以降で増加してきます。
陰部に集中する局所性のかゆみは、
卵巣機能低下による白帯下でも起こります。
カンジダ膣炎やトリコモナス膣炎と
違うことは受診して確認してくださいね。
肛門部に集中する局所性のかゆみは、
小児だとぎょう虫の可能性がありますね。
中年男性だと便秘・下痢・痔によることが多いのですが…
心因性や、他の基礎疾患のせいかもしれません。
全身性では加齢による
乾燥由来の老人性掻痒症が代表的。
加齢により、全身水分量が減りますね。
しかも皮脂の分泌量も減りますので、
皮膚の表面水分を維持するための
皮脂バリアも作れません。
結果として、水分が角質の隙間から蒸発し、
表皮はかさかさ。
これが老人性掻痒症で、
冬場の強い乾燥で悪化する特徴があります。
過度のセッケンによる洗浄や、
ナイロンタオルによる刺激も悪化させる要因ですね。
そして、全身性掻痒感の原因として
忘れてはいけないのが基礎疾患の存在です。
全身にかゆみのでる原因には、
糖尿病や甲状腺機能異常等の内分泌異常をはじめ、
肝障害や腎障害、血液異常やがん、
アレルギーなど並べたらきりがありません。
疾患ではない正常の妊娠でも起こりうる現象です。
ただし、強いかゆみが出やすい基礎疾患として、
モルヒネ中毒、多発性硬化症、
人工透析の存在を覚えておいてください。
これら基礎疾患がある全身性掻痒症は、
基礎疾患の治療が一番。
そして保湿外用薬で皮膚表面の乾燥を防ぐことです。
基礎疾患がない、
もしくはどうしてもかゆいときには
抗ヒスタミン薬の内服やステロイド剤の外用を
併用することになりますよ。
皮脂不足の乾燥は、
高齢者の問題だけではありません。
皮脂欠乏性湿疹は下腿・腰部に好発する乾燥性湿疹。
30代から発症することもあり、
皮膚の見た目の割にはかゆみが強いことが特徴です。
始まりは、何らかの原因で皮脂分泌が不足すること。
皮脂による油分の膜がないと、
角質は水分を保持できません。
これはかゆみの閾値
(かゆいと感じ始める刺激の強さ)が下がった状態。
ちょっとしたことですぐかゆくなり、
かく(掻把)とその刺激のせいで
汗や皮脂が出なくなってしまいます。
もちろん、皮脂不足では
皮膚の防壁機能を十分に果たすこともできません。
改善のためには、とにかく保湿!
加湿器、ぬるいお風呂やシャワーを使い、
刺激の少ない木綿の肌着を選んでください。
刺激物のアルコールや香辛料も控えましょう。
あとは、保湿剤で援護してあげましょう。
抗ヒスタミン薬の内服で、
かゆみを抑えるお手伝いも追加です。
湿疹化してしまったら、
ステロイド剤外用も併用することになります。