12 末梢神経のおはなし(3)触覚と皮膚(後半)(6)
(1)やけど
やけど(熱傷)は、
様々な熱による皮膚などの組織損傷。
「どこまで損傷したのか(ダメになったのか)」を
示すのが、「深達度」です。
Ⅰ度は表皮のみ。
赤くなって、痛いだけで済んだ状態です。
Ⅱ度は真皮まで損傷したもの。
Ⅰ度の状態に加え、水疱も出来てきます。
真皮のうち浅い部分で済むと浅Ⅱ度、
深い部分まで損傷すると深Ⅱ度とすることもあります。
Ⅲ度は皮下組織より下まで損傷してしまったもの。
損傷部は赤ではなく、乳白色に変わります。
「皮膚」は、もうありません。
だから、意外なほど痛みは感じません。
ここで、皮膚の役目を思い出してみましょう。
皮膚は、
身体防御の最外壁・物理的防御を担っていましたね。
異物の侵入を防ぎ、
足止めした異物の増殖を抑えていました。
水分蒸発防止と、体温の調節機構もありましたね。
そんな皮膚が(特にⅢ度では)損傷した以上、
そこには今確認した役目を果たしてくれるものがありません。
感染の最大のピンチであること、理解できましたか?
そんな熱傷の原因は
炎のような高熱だけではありません。
ホットカーペットやカイロ、
湯たんぽ等による「(いわゆる)低温やけど」。
雷や高圧電流(電線等)による「電撃熱傷」、
強酸や強アルカリによる「化学熱傷」もあります。
熱傷のとき、目指すは「感染予防と上皮化」。
上皮(皮膚)ができれば、感染予防もできます。
だから、まずは火傷による
皮膚の損傷を最小限に抑えること
何はなくとも、すぐに冷やしてください。
軽いものなら数分間流水に。
場合によっては数十分、とにかく冷やしましょう。
軽い熱傷なら、ステロイド軟膏を塗って、
感染予防のため覆っておきましょう(被覆)。
水疱中の水分が自然と吸収されれば、一安心。
水疱が破けてしまうと
感染可能性が出てきますので、注意ですよ。
深Ⅱ度以上の熱傷では、外科的修復が必要になります。
ケロイドというのは、瘢痕組織が過剰に増殖したもの。
傷の後が赤みを帯びて盛り上がった状態です。
皮膚に出来た欠損を「潰瘍」といいますが、
3週間以上治らないと難治性潰瘍です。
火傷の後はケロイドや難治性潰瘍を起こしやすく、
悪性腫瘍化の危険と
拘縮・可動域低下の可能性が出てきてしまいます。
もし全身やけどなら、すぐに集中治療室行きです。
体のどれくらいに熱傷を負ったかを判断する
「9の法則」と「5の法則」を覚えておきましょう。
9の法則は成人用。
全身を「頭と首」、「上肢(右)」、
「上肢(左)」、「胸部(腹側)」、
「胸部(背側)」、「腹部(腹側)」、
「腹部(背側)」、「大腿(右)」、
「大腿(左)」、「下腿(右)」、
「下腿(左)」の11ブロックに分けます。
この11ブロックはそれぞれが
体表面の約9%を占めていると考えるのが、
9の法則です。
「大腿(右)」と「下腿(右)」の熱傷なら、
約18%の熱傷ですね。
この11ブロックだけでは、
全部足しても99%にしかなりません。
残った1%は、「陰部」です。
5の法則は小児用。
小児は成人と比べ頭の割合が大きく、
手足の割合が小さいですね。
だから「頭と首」・「胸腹部(腹側)」・
「胸腹部(背側)」の3ブロックは約20%、
「上肢(右)」・「上肢(左)」・
「下肢(右)」・「下肢(左)」の
4ブロックは約10%。
これで全部合わせると100%ですね。
成人の例と同様に右足(下肢)を熱傷したら、
小児では約10%の熱傷です。
広範囲熱傷にあたるのは、
成人ではⅡ度以上の火傷が体表の30%以上になったとき。
小児や高齢者ではⅡ度以上が20%以上で広範囲熱傷です。
いわゆる「重症やけど」ですから、
すぐに専門設備のある病院に入院し、
全身管理が必要になってきます。