6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(22)
3 肝臓の異常
膵臓・胆嚢のおはなしと、
肝臓は無関係ではありません。
膵臓や胆嚢がおかしくなると、
かなりの割合で肝臓もおかしくなってしまいます。
体の中の位置関係と関係性を思い出せば、
イメージすることは難しくありませんね。
肝臓は最大の合成・分解工場。
取り入れた栄養を、
今一番必要とされている形にするために、
小腸から門脈経由で吸収したての
栄養物たっぷりの血液が最初に流れ込むところです。
合成・分解のどちらにもATPを使うため、
消費の場でもあります。
肝臓がおかしくなる理由は、実にたくさんあります。
個別のおはなしを始める前に、
全体の流れを確認しておきましょう。
肝臓がおかしくなるスタートは炎症です。
炎症が治らないと、
肝臓の組織が機能を果たせない
「肝硬変」と呼ばれる状態になります。
他の器官では「~不全」と呼ばれる状態ですね。
こうなってしまうと、
ヒトは長く生きることができません。
それは困るので、
他の人から肝臓の一部をもらうのが「肝移植」。
肝臓には自己修復能力(再生能力)があるので、
一部を切り取って他の人に渡しても、
渡した方(ドナー)も
受け取った方(レシピエント)も生きていけます。
これが生体肝移植ですね。
(1)炎症
では、個別のおはなしスタート。
始まりは「炎症」でした。
すごく大きく分けて、
肝臓原因と肝臓以外原因があります。
肝臓原因はさらに「自己免疫性」、「アルコール性」、
「薬剤性」、「細菌・寄生虫性」、
「ウイルス性」と分けられますよ。
炎症の肝臓以外原因の代表は「原発性硬化性胆管炎」。
胆嚢に胆汁を送る胆管が、
進行性の慢性炎症を起こして
硬く狭く(線維性狭窄)なったものです。
抗核抗体が見つかるため、
自己免疫疾患ではないかと考えられています。
黄疸とかゆみ(掻痒感)が出て、
進行性が多いため肝移植も考える必要があります。
もちろん、胆管を広げるために
カテーテルを入れてバルーンやステント留置、
ドレナージで対処することもありますよ。
A 自己免疫性肝炎
炎症の肝臓原因として
「自己免疫性肝炎」というものがあります。
これ、抗核抗体が出るタイプと
出ないタイプがある困りものです。
しかも無症状が多く、
他の自己免疫疾患と合併していることが多いため、
さらに困ってしまいます。
免疫抑制剤のコルチコステロイド
(ステロイド剤)が効きますが…
効かないと先程確認した流れ通りに
肝硬変に到達してしまいますよ。