7 体温のおはなし(4)内分泌系(全般)(3)
((2)下垂体の続き)
下垂体ホルモンの出すぎの原因に
「下垂体腫瘍」があります。
大部分は、転移をしない良性腫瘍。
増えた細胞のせいでホルモンを多く出すようになる
過剰産生タイプが約6割。
ホルモンとは無関係なタイプが残りの約4割です。
下垂体腫瘍の共通症状は、頭痛と視野障害。
すぐ近くに視神経の視交叉があるせいですね。
ホルモンとは無関係の腫瘍でも、
周囲を圧迫することに変わりはありません。
失明の可能性はありますし、
脳圧亢進から脳ヘルニアを起こすと生命のピンチ到来です。
ホルモン産生過剰タイプだと、
その過剰になったホルモンの作用が強く出すぎます。
成長ホルモン(GH)過剰では、
高血圧・耐糖能異常のほか、鼻や口唇の肥大、
下あごの突出、眉弓部の膨隆等の先端巨人症状顔貌が出てきます。
プロラクチン(PL)産生過剰だと、
産後のように月経不順、不妊、無月経、性欲低下が見られます。
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰だと、
副腎皮質ホルモン過剰症のクッシング症候群が出てきます。
成長ホルモン過剰では、
高血圧・糖尿病を合併しやすくなりますから、
元の病気に加えて、
糖・脂質代謝異常や動脈硬化症疾患も用心した看護が必要です。
2 甲状腺と副甲状腺の異常
首の、甲状腺と副甲状腺に入りましょう。
ここからは現場にあたる
個別のホルモンのおはなしになります。
一応「視床下部や下垂体がおかしいと、
ここから先は影響を受けるぞ!」という意識は、お忘れなく。
(1)甲状腺
甲状腺ホルモンには代謝に関係する
トリヨードチロニン(T3)・チロキシン(T4)と、
骨に作用するカルシトニンが含まれます。
甲状腺ホルモンが過剰になる代表例は
「バセドウ病(バセドウ氏病)」。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体抗体のせいで、
甲状腺が刺激され続けて、甲状腺ホルモンが出すぎます。
「抗体」の文字からお分かりのように、
自己免疫疾患の一種ですが、
でも「なぜ」そんな抗体ができてしまうのかは不明です。
甲状腺の腫れ、代謝亢進による体温上昇・動悸に加えて、
眼球突出が特徴!
眼球突出は常に出る症状ではありませんが、
ひどくなると目を閉じられなくなって
角膜に潰瘍ができてしまうこともあります。
治療としては手術、抗甲状腺ホルモン薬、
放射線治療(131I-内用)などがあります。
放射線治療は、18歳以下には原則不可。
妊娠中、授乳中、妊娠可能性のある人、
6か月以内に妊娠予定の人もダメです。
長期戦にはなりますが、治療すればしっかりと治ります。
身体疲労のみならず、
気分の上下も激しくなりますので、しっかりサポートしましょう。
甲状腺中毒症の劇症型「甲状腺クリーゼ」には要注意です。
中枢神経症状に加えて循環不全を起こし、
ショックにつながりかねません。
「甲状腺中毒症」というのは、
「甲状腺ホルモンがたくさんあること」で
体に悪影響が起きたこと。
バセドウ病でも起こりますが、
甲状腺の組織が外傷等で破壊されたときや
体外から薬を入れたときでも起こります。
「甲状腺機能亢進症」というのは、
「甲状腺ホルモンの産生が増えたこと」で
体に悪影響が起きたこと。
バセドウ病は当てはまっても、
外傷等や薬では当てはまらないことを忘れないでください。