8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(2)大腸(5)
消化管にできる腫瘍の1つに
「神経内分泌腫瘍(NET)」というものがあります。
胃や腸の粘膜にある
腸クロム親和性細胞から生まれる腫瘍です。
この「腸クロム親和性細胞」というのが腫瘍化すると、
セロトニン、ヒスタミン、カテコールアミン、
プロスタグランジン等の
神経伝達物質や内分泌物質を分泌するようになるので
「神経内分泌腫瘍(NET)」です。
よくできるのは直腸。
症状は下痢だけでなく、出てくる物質のせいで
皮膚紅潮発作やぜんそく様発作が見られます。
主に、検診の内視鏡で見つかります。
ちゃんと手術して取り除ければそれでオーケー。
もし取り除けないと、
肝臓に転移する可能性があることに注意!
3 過敏性腸症候群
これまでしてきたのは、
発生原因不明なものはありましたが
「大腸細胞のどこかが変!」というおはなし。
「あれ?排便は変なのに
大腸の細胞はおかしくないよ?」というものが、
過敏性腸症候群(IBS)です。
腹部症状と便通異常の二大徴候は出ますが、
「器質的異常のない、
小腸・大腸の運動及び分泌異常に基づく症候群」ですね。
腹部症状には、不快感レベルから
強度の膨満感・腹痛レベルまで含まれます。
便通異常では便秘と下痢を繰り返すことが多いですね。
原則として、血便は出ませんよ。
原因になりうるのは、
体質的素因に強いストレス・不安・抑うつ。
目標は、症状消失ではなくコントロールです。
適切な運動と、食事時間の一定化に加え、
朝の排便習慣を確立させること!
薬は必要に応じて止痢薬や便通異常改善薬、
抗不安薬等が使われますが、あくまで補助。
精神療法も追加されることがありますよ。
4 肛門周囲の異常:痔・ストーマ・臓器脱
出口(肛門)周りについてもおはなししましょう。
肛門周りの「変!」といえば痔核。
直腸及び肛門の静脈叢が瘤状になったものが、痔核。
肝臓がおかしくなったときの迂回ルートの1つに
直腸静脈があったこと、思い出してくださいね。
歯状線より上にできるものが内痔核、
そこより外側にできると外痔核です。
原因は周辺支持組織の減弱と怒責(いきみ)等によるうっ血。
肝硬変による門脈圧亢進はもちろん、
下痢や便秘、長時間の立位・坐位もきっかけになりえます。
便に付着した出血で気付くことが多いですね。
痛みは、外痔核では
血栓ができて血行不良になると出てきます。
内痔核では、外側に向かって出てきた腫瘤部を
肛門括約筋が締め付けることで生じます。
内痔核が排便時に肛門の外側に出てしまうと「脱肛」。
脱肛が内側に戻らない(還納不能)状態になると、
嵌頓(かんとん)です。
ヘルニアのところで出てきた、危険状態ですね。
進行度合いによって手術や硬化療法、
疼痛を抑えたり
便通を正常化したりする薬物療法等があります。
生活で注意することは、
刺激物(香辛料・酒・たばこ)を控えて、
食物繊維をたくさんとること。
お風呂にもちゃんと入って、清潔を保ちましょう。
長時間座りっぱなしもダメですからね。