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10 各論5:体温(感染・免疫):⑩がん(悪性腫瘍)(1)

2023年6月3日

がんに効く薬はDNA複製や分裂そのものを邪魔します。

最初にDNAを作るときに必要な葉酸を邪魔するお薬。

…実はこれがメトトレキサート(メソトレキセート)。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00014253

先ほど出てきた関節リウマチのお薬です。

「ビタミンB12と葉酸がないとDNAを作れない」と

生化学でおはなししましたね。

葉酸を働ける形(活性型葉酸)にする

酵素の働きを邪魔しています。

禁忌や併用注意は、もう一度目を通しておいてくださいね。

 

DNAにくっついて複製を邪魔するお薬もあります。

ドキソルビシン塩酸塩が一例です。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058608

DNAにくっついて複合体を作ってしまうため、

DNAを複製するための酵素がくっつけなくなってしまいます。

複製を邪魔する薬は他にもありますよ。

全身性エリテマトーデスで出てきた

シクロホスファミド水和物や、

白金製剤(シスプラチンなど)も

複製を邪魔するお薬です。

 

ドキソルビシン塩酸塩の禁忌は

薬に過敏症のある人と、心機能に異常のある人。

妊娠・妊娠可能性のある人や授乳中の人も禁忌ですね。

動物実験で催奇形性が報告され、

授乳の安全性は確立されていません。

 

警告文はがんの治療に一般的なものです。

読んでみれば「確かにそうだよね」と思えるものばかり。

 

そして併用注意には、

心毒性のある抗腫瘍薬アントラサイクリン系の名前が。

これは禁忌の「心機能異常」と対応させれば難しくありません。

他の抗腫瘍薬や放射線治療との併用では、

骨髄抑制が強く出てしまう可能性があります。

パクリタキセルの名前が個別に上がっていますが、

これも「他の抗腫瘍薬」の一部ですよ。

 

「骨髄抑制」の文字を見て、

血球の分化をイメージできていますか?

造血幹細胞から赤血球、白血球、血小板ができていく

生化学で勉強したあの図です。

造血幹細胞のいる骨髄の働きが抑制される

(邪魔される)ということは、

全ての血球が生まれにくくなるということです。

「だから貧血や免疫能力の低下(免疫抑制)、

出血が止まりにくくなる可能性があるんだね!」と

意識していきましょうね。

 

なお、放射線治療はDNAに直しきれないほどの傷をつけて

DNAを正しく複製できない状態にします。

正しく複製ができなければ、

がん細胞も増えることができませんね。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20230603更新)