10 各論5:体温(感染・免疫):②細菌に効く薬(7)
消毒はヒトの体だけではなく、
器具等にも使われます。
熱で変性するもの等、
滅菌にふさわしくないものに対しては
「器具の消毒」ですね。
消毒薬を高水準、中水準、低水準の3つに分けますよ。
高水準消毒薬は、芽胞状態の菌まで殺せるもの。
中水準消毒薬は、
ものによっては特定の芽胞菌を殺すこともできるもの。
低水準消毒薬は、
芽胞菌はじめ一定の菌には効かないものです。
「そんなの、いつも高水準消毒薬をつかえばいいよ!」
なんて思ってはいけませんよ。
芽胞状態の菌を殺せるということは、
ヒトの細胞も無事ではいられません。
だから高水準消毒薬は、
内視鏡器具等の消毒に使われる薬です。
グルタルアルデヒド(グルタラール)が代表ですね。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049703
目や鼻の粘膜を刺激するので、吸入禁止。
滅菌が終わった器具も、
滅菌水での十分なすすぎが必要になります。
中水準消毒薬は「もの」と「使い方」を選べば
ヒトにも使うことのできる消毒薬。
ヒトの細胞を害することなく、
細菌(病原微生物)を殺すところを見定める必要があります。
しかも消毒薬は「濃ければ濃いほど効く」ものではありません。
だからこそ、希釈(薄める)計算が必要で、
看護師国家試験にも計算問題が出るのです。
計算問題の解き方については、
「数字(計算)なんて怖くない!」へどうぞ。
中水準消毒薬には次亜塩素酸ナトリウムと
ポピドンヨード、消毒用アルコールがあります。
次亜塩素酸ナトリウムはすべての微生物に効きますが、
結核薬と芽胞にはかなり高濃度が必要です。
ヒト肝炎ウイルスB型・C型(HBV、HCV)に対しても
同じように高濃度が要求されます。
冬に多いノロウイルスにも効くのはありがたいのですが、
金属にも人にも使えませんよ。
「ピューラックス」や「ハイター」と書いてあったら、
次亜塩素酸ナトリウムのサインです。
ヒト用最強はポピドンヨード。
破傷風菌の芽胞には効きませんが、
ボツリヌス菌やディフィシルの芽胞には効いてくれます。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059448
数分待つ必要はありますが、
10%水溶液が手術時にもヒトに使える消毒液です。
10%水溶液は、
15~30倍に薄めるとうがい薬(含嗽薬)として使えます。
「イソジン」と聞けば、イメージできますね。
傷口から吸収される量によっては、
ヨウ素による甲状腺機能異常を示す可能性があります。
しっかり消毒したいからと言って、
あふれて浸りっぱなし…では危険ですからね。
次回は消毒用アルコールと、低水準消毒薬のおはなしです。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)