6 各論1:脈・血圧(心臓):不整脈・心不全(1)抗不整脈薬(1)
不整脈と心不全の薬のおはなしに入りましょう。
不整脈にはたくさんの種類があります。
薬で治療する対象になるのは頻脈性の不整脈。
頻脈の原因は自律神経(交感神経系)の命令過多か、
必要以上の電気刺激(収縮命令)が出ているせい。
どちらも適度に薬でブロックしてあげれば、
正しく整った脈にできそうです。
徐脈性不整脈については、
ペースメーカー等を用いて
足りない収縮命令を補うことになります。
まず、自律神経の興奮過多について。
交感神経系が興奮モード担当でした。
交感神経系の神経伝達物質はノルアドレナリンで、
受容体が4種類あって、
β1が心臓収縮に関係が深い受容体でしたね。
β(β1)遮断薬のおはなしは、
狭心症のところでおはなしした通り。
β2もブロックしてしまうと、
心臓以外の副作用
(気管支収縮でぜんそく)が出ることもお忘れなく!
次に電気刺激のコントロール。
こちらも細胞膜電位のおはなしですね。
ナトリウム・カルシウム・カリウムの
チャネルがありました。
カルシウムチャネルを邪魔する
カルシウム拮抗薬についても、
狭心症のところでおはなししましたよ。
心筋の収縮をゆっくりにする
ジルチアゼム(ヘルベッサー)の出番ですね。
ナトリウムチャネルを邪魔するお薬もありますよ。
それがナトリウム調整薬。
リドカイン(キシロカイン)、
ジソピラミド(リスモダン)などですね。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051126
キシロカインは不整脈のうち期外収縮や頻拍、
急性心筋梗塞による心室性不整脈に使われますね。
期外収縮は、
心臓がしゃっくりを起こしたように
急にぴくっ!と収縮すること。
心臓の4つの部屋のうち、下の2つが心室ですね。
「心臓から血液を送り出すところ(心室)で、
急に血液が来なくなって動かなくなった
(心筋が死んでしまった:心筋梗塞)ときに出る、不整脈」が
「急性心筋梗塞による心室性不整脈」です。
急に変な収縮命令(電気刺激)が出ているから、
ナトリウムチャネルをブロックしてあげるのです。
禁忌は完全房室ブロックのような重い刺激伝導障害。
房室ブロックというのは、
刺激伝導系の一部(房室結節)の働きが悪くなったせいで、
上半分(心房)と下半分(心室)の収縮が
バラバラになってしまった状態。
もう薬でどうこうするレベルではなく、
ペースメーカーを埋め込む必要があります。
ここにナトリウム拮抗薬を入れると、
心臓が止まってしまう危険性がありますよ!
禁忌ではないけれど、併用注意のものがあります。
まず、血管拡張薬。
狭心症のところでおはなししたお薬と一緒に使うと
キシロカインが効きすぎる(分解遅延)可能性があります。
肝臓の血流量が低下するからですね。
そしてセントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)。
こちらは分解酵素を増やしてしまうので、
キシロカインの効きが悪くなります。
セントジョーンズワートは
「リラックスできるお茶・サプリメント」として
気軽に手に入ります。
意外なところで薬の効きがいまいち…に
なってしまいますので、
これまた添付文書を読んでくださいね。
キシロカインは局所麻酔剤としても使います。
でも「抗不整脈用」と「局所麻酔用」は
アンプル等に含まれる成分が違いますので、
間違わないでくださいね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221214更新)