2 薬に共通するおはなし(1):吸収(A)の応用(8)
注射薬のおはなしの続き。
今回は「時間」に関係するおはなしです。
注射薬は、注射器から直接体に入れるだけではありません。
ゆっくり体の中に入れる必要があるときには、
注射薬を輸液のボトル(パック)に入れることになります。
いわゆる「点滴」ですね。
もちろん、ボトルに注射薬を入れるときには、
感染予防・清潔管理が必要になります。
では、注射器から直接体内にいれれば、
常にすぐ薬は効くのか。
そんなことはありません。
「いれるところ」によって、
薬の効く速さは変わってきます。
「~注射」が4種類あるのは、そのためです。
注射の「いれるところ」の名前を確認してしまいましょう。
皮内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉注射です。
体に入る深さが浅いほうから深いほうへと並べてあります。
体の表面付近の構造を復習しながら、
注射の種類を見ていきましょう。
皮内注射は、皮膚のうち表皮と真皮の間に入れるもの。
針をかなり傾けて…水平ギリギリで針を刺すイメージです。
入れる薬は体の奥へと吸収されていきません。
注射した薬は、水膨れのように一か所にとどまったままです。
「ん?それって意味あるの?」
大ありです。
免疫応答があるかどうかを確認したいのに、
体の奥まで薬液が吸収されてしまったら、
反応が起こっているかをすぐに見ることができません。
遅延型(Ⅳ型)のアレルギー反応の有無を確認する、
ツベルクリン反応に使われるのが皮内注射です。
これは結核に対する免疫の確認でしたね。
同じくアレルギー反応の有無を確認するために、
抗原液をたらしてから同じ深さまで皮膚に小さな傷をつける、
プリックテスト(スクラッチテスト)というものもありますよ。
「注射」ではありませんが、
「体の奥に吸収させない」うえで、
免疫応答を見るという点で共通していますね。
皮下注射は真皮の下にある皮下組織に薬液を入れる注射。
針の角度としては、三角定規の30°くらいです。
ここから奥に入れると、体の中へと吸収されていきます。
でも、皮下組織にはあまり血管は多くありません。
そのせいで、薬はじんわりしみこんでいくことになります。
ゆっくりじわじわ効いてほしい…
一般的な予防接種で使われるのが皮下注射です。
同様にあまり早く効くと悪影響の出る可能性がある
糖尿病のインシュリン注射も、皮下注射です。
でも、自分で注射をするのに角度まで指定されては大変ですね。
だから、糖尿病の自己注射用の針の長さは
皮下にちょうど届く長さ(短さ?)にしてあります。
これなら、患者さんが自分で簡単に注射できますね。
残る2つの注射は、次回おはなししますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221108更新)