4 薬に共通するおはなし(3):薬の働き(3)
細胞の中に入らなくても効く薬の続き。
化学的に胃酸を中和する制酸剤、
受容体ではなくチャネルにはまるイオン拮抗薬、
血液中の酵素を邪魔する薬などがここに当てはまります。
制酸剤の主成分の例は炭酸水素ナトリウム(重曹)。
水に溶けるとアルカリ性になる…ということは、
化学(というよりも理科?)で勉強してきましたね。
酸とアルカリを合わせて中性付近にもっていくことが、
看護の世界で出てくる「中和」。
化学(や科学)で使われる「中和」のように、
「ぴったりpH7.0の中性」にする必要はありませんよ。
胃酸が出すぎて粘液ガードが追い付かないときに、
胃酸の働きを弱めて胃の粘膜や筋肉を守るお薬です。
チャネルというのは、
細胞膜にある決まったイオンだけが通れる滑り台。
細胞の膜電位のところで、ナトリウムチャネル、
カルシウムチャネルチャネル、
カリウムチャネルが出てきましたよ。
この滑り台の入り口にはまり、
滑り台自体は使える(チャネルは開放している)のに
イオンが入り込めない状態にしているのがイオン拮抗薬です。
降圧剤のアダラートは「カルシウム拮抗薬」ですね。
カルシウムイオンの流れ込みを邪魔することで、
血管平滑筋を収縮しにくくします。
血管平滑筋が収縮すると、
強い力をかけないと
血液を全身にめぐらせることができませんから、
血圧が上がります。
血管の平滑筋が収縮しにくくなるということは、
あまり力をかけずとも血液をめぐらせることができるので、
血圧が下がる(降圧)のです。
降圧剤のヘルベッサーも血管で同じ働きをしますが、
こちらは心臓での働きに注目されることが多いですね。
心筋の刺激伝導系で生まれる電気
(心筋収縮命令)の発生・伝達に対する効果です。
こちらでもカルシウムイオンの流れ込みが邪魔されて、
心筋(刺激伝導系)で電気ができにくくなります。
これによって心筋の収縮命令が弱まりますから、
心臓から押し出される血液の圧力が下がる
(イコール血圧が下がる:降圧)ことになります。
…もし、ヘルベッサーの働きが
必要以上に強く出てしまったら。
必要以上に心筋収縮命令が弱まるということですから、
徐脈(脈がとてもゆっくりになること)や、
心不全(心臓が十分に働いていない状態)が
起こる可能性があります。
これでは、
全身に十分な血液(酸素と栄養物)を運べませんね。
生命の危機につながります。
薬の量に注意することはもちろんですが、
飲んでいる人のバイタルサインはいつも以上にしっかり確認!
次回は「血液中にある酵素を邪魔する」薬のおはなしです。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221128更新)