4 薬に共通するおはなし(3):薬の働き(5)
催奇形性が問題になるのは、
「お腹の中にいるとき(胎児期)」です。
受精卵からヒトとして生きていける体を作るため、
細胞分裂をたくさんしている時期ですね。
胎児期(発生)のおはなしは、
解剖生理学の生殖器系のところでしてあります。
ヒトとしての形を作っている最中に
不具合が起こってしまうと、
「ヒト」として生きていけません。
原因になりうるTORCH等による先天異常、
染色体振り分けミス、
放射線による異常についてもそこでおはなししてあります。
今回するおはなしは、
そこ(8週くらいまでの異常)よりも後に起こった不具合。
ヒトとして生きていけるけど、
何か変なところができてしまった「奇形」です。
薬が奇形を引き起こす原因になっているとき、
その薬には「催奇形性がある」といいます。
12週までに働いた薬による奇形は
外から見て分かるものが多く、
それ以降(~16週)に働いた薬による奇形は
外からは見えないけど…というものが多くなります。
では、なぜ胎児に薬の影響が及ぶのか。
胎盤を、簡単に復習しましょうか。
胎盤は胎児にとって肺であり腎臓でもあります。
母体血から酸素と栄養分を受け取り、
二酸化炭素と不要物を母体血に渡すところですからね。
この「(母体血から)受け取る」ときに、
薬も受動輸送で胎児側に入り込んでしまうことがあります。
受動輸送には2通りのパターンがありました。
「脂溶性は細胞膜の脂に溶ける」と
「水溶性は水に溶けて水と一緒に…」でしたね。
だから「(催奇形性を示す)
妊娠可能性・妊娠中は飲んではいけない薬」は
「脂溶性の薬」と
「水と一緒に細胞膜を抜けていく薬」です。
「水と一緒に細胞膜を抜けていく」には、
それなりの小ささが必要。
イオン化するもの(「~イオン」になるもの)は、
小ささ合格。
それ以外でも分子量
(その薬の成分になっている分子の大きさ)が
1000以下が細胞膜を通り抜ける目安です。
これ以上大きいなら、胎児血には流れていきません。
分子量のおはなしについては
(深入りする必要はありませんけど)
生化学や基礎化学を見直してくださいね。
一度奇形が起こってしまうと大変ですから、
ちゃんと添付文書に書いてありますよ。
「禁忌(絶対にダメ!)」として、
添付文書の商品名のすぐ下。
あとは相互作用の次のブロックあたりに
「妊婦・産婦・授乳婦等への投与」という段落があります。
そこにも
「(その人たちには)投与してはいけませんよ」とあります。
じゃあ、胎児に薬が届いてしまうと、
それらの薬はなぜ奇形を起こしてしまうのか。
それは細胞の正常な増殖を「変!」にしてしまうから。
このおはなしには、
細胞内での薬の働きについて理解が必要ですね。
次回、細胞内で薬の働く仕組みをおはなししていきましょう。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221128更新)