7 各論2:脈・血圧(血管):高血圧・低血圧(1)降圧薬(3)
前回、ACE阻害剤のおはなしをしました。
「…もっと直接尿に関係するホルモンが
働くところを邪魔しちゃえばいいんじゃないの?」
そう思った人、いますよね。
確かに、
アルドステロンやバソプレッシンが
くっつくところ(受容体)を邪魔する薬はあります。
今から簡単におはなししますが…
結論だけ先に言うと、「残念ながらいろいろと使いにくい薬」です。
アルドステロンと拮抗
(似た形で受容体を奪い合う)関係の薬の一例として、
スピロノラクトンがあります。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062337
確かにアルドステロンの働きが弱まれば、
ナトリウム(と水)の再吸収はされにくくなりますから、
血圧は下がりますね。
でも、このお薬には難点があります。
性ホルモン受容体にも拮抗関係になってしまうのです。
アルドステロン(副腎皮質の鉱質コルチコイド)も、
性ホルモンもステロイドホルモン。
どちらの受容体にも邪魔し合う関係になると、
男性で女性化乳房が見られる可能性があります。
禁忌対象は高カリウム血症、無尿性の急性腎不全、
アジソン病の人、抗リウマチ薬の一部を使っている人など。
まず「カリウム血症はテント状T波を引き起こして、
心停止から死の危険がある」ことはいいですね。
アルドステロンは原尿中のナトリウムイオンと
血液中のカリウムイオンを交換
(ナトリウムイオン再吸収とカリウムイオン分泌)します。
つまり、体内にカリウムイオンがたまりやすくなりますね。
禁忌対象の人が
さらにカリウムイオンを体の外に出しにくくなると…
高カリウム血症の危険です。
アジソン病が副腎皮質欠乏症であること、思い出せましたか?
じゃあ、もっと尿量に直接影響するバソプレッシンの薬はどうか。
バソプレッシンの受容体を邪魔する薬には
トルバプタン(サムスカ)やモザパプタンなどがありますが。
「他の療法で効果が不十分なときに限る」との注意書きがあります。
そして使ってよいとき(適応)も、
「抗利尿ホルモンの異所性産生腫瘍による
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群のみ」です。
つまり…
「本来バソプレッシンを作るところ以外で、
コントロールできない状態(腫瘍)で
バソプレッシンが作られてる!
仕方ないから受容体レベルでブロックするからね!」
こんなとき以外には使われないお薬です。
禁忌や使用警告が多く、
生殖細胞に染色体異常を引き起こす可能性もあります。
「いろいろと使いにくいお薬」ですから、
一般的な高血圧の降圧で出てくることはありませんからね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221226更新)