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9 各論4:体温(内分泌系):甲状腺・副甲状腺(3)

2023年4月4日

逆に甲状腺機能が低下してしまったら、

甲状腺ホルモンを補充してあげましょう。

 

レボチロキシンナトリウム水和物(チラージン)は、

化学的に(=人工的に)合成したチロキシンそのものです。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060631

禁忌は新鮮な心筋梗塞のある人。

「新鮮」というのは、「できてすぐ!」の意味ですね。

心筋梗塞ができて、体(特に心臓)がその状態に慣れる前に

チロキシンが増えると、全身で代謝が上がります。

全身細胞で酸素の必要量が増えて、

酸素を届けるために(チロキシン自身の働きでもありますが)

心臓が頑張って収縮することになります。

これ、心臓の負荷が増えてしまいますから…

梗塞の先にある心筋は大ピンチですね。

 

慎重投与についても、

甲状腺ホルモンの「代謝」をキーワードに理解できますよ。

重い心血管系の障害は、

先程の心筋梗塞のおはなしとほぼ同じ。

高齢者や糖尿病患者では、代謝状態が変わってきます。

特に糖尿病での血糖値コントロール条件が

変わってくることには注意ですよ。

低出生体重児や早産児にも慎重に。

体の中の準備が不十分なまま外の世界に出てきて、

しかもこれまた代謝が活発になるため、

循環不全を起こしやすくなってしまいます。

血圧低下や尿量減少、

血中ナトリウム濃度低下は危険なサインですからね!

 

あと、忘れてはいけないのが

下垂体機能不全や副腎皮質機能不全のある人。

これらの人に何も考えずに

甲状腺ホルモンを補給してしまうと、

副腎クリーゼを起こして、

ショック状態から死に至る危険があります。

副腎皮質ホルモンの急性欠乏症が副腎クリーゼでしたね。

ちゃんと診察・処方をするときにお医者さんが

副腎皮質ホルモン補充を最優先にしてくれるはずですが…。

甲状腺ホルモン補充で血圧低下が見られたら、

「もしかして!」とすぐに報告してくださいね。

 

使用注意は先程の「亢進症の逆!」になりますよ。

ジゴキシン製剤とワーファリンカリウムは、

血中濃度と抗凝固作用が変わりますね。

併用すると甲状腺ホルモンが増えることになるので、

ジゴキシン製剤は血中濃度が低下し、

ワーファリンカリウムでは抗凝固作用が増加しますよ。

インシュリン等の血糖値コントロール薬も、

コントロール条件が変わりますね。

コントロールを少し緩く

(血糖値を少し高め)にしないと、

全身細胞は代謝が亢進していますから、

細胞がお腹ぺこぺこになってしまいます。

 

あとはアドレナリンを含む

交感神経系刺激薬と吸着薬にも注意ですね。

甲状腺ホルモンは、

アドレナリン等の交感神経系伝達物質

(のうちのカテコールアミン)がはまるところ

(受容体:レセプター)の感度を上げる働きがあります。

同じアドレナリン量でも、ドキドキしやすくなるのですね。

そのせいで冠状動脈から心筋に必要な酸素(血液)を

供給できない状態

(冠動脈等の不全:冠不全)を起こす可能性があります。

吸着薬の代表は、

消化器系の胃・十二指腸や下痢でも出てきた

アルミニウム含有制酸剤。

これらにくっついてしまい、

補充したはずの甲状腺ホルモンが

吸収されなくなってしまうからですね。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20230404更新)