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2 「健康」とは:(2)「よく生きる」ために[補足4]

2019年11月20日

運動が体に与える影響について。

脂質に関係する、リポプロテインリパーゼのおはなしですね。

これは筋肉等にある毛細血管内皮細胞にある酵素で、

「リパーゼ」の名の通り中性脂肪(TG)をグリセロールと脂肪酸に分解します。

高血圧を引き起こす動脈硬化が起こるとき、

血管の内側にたまる脂質の1つが中性脂肪(TG)です。

これが血管内皮細胞で分解されることで、

「動脈硬化の予防と改善!」につながります。

 

また、血液中の余っている中性脂肪(TG)が減ると、

中性脂肪を運搬できるリポタンパク球

(キロミクロンやVLDL)の必要性が減ってきます。

キロミクロンやVLDLも、

「やたらと多い中性脂肪を肝臓に運ぶために必要以上に多すぎ!」状態だったので、

「減る=正常に戻る」ことになります。

 

同様に血管内にたまってしまう脂質がコレステロール。

コレステロールを見つけたマクロファージ(白血球の一種)は、

「たまっちゃダメ!」と貪食するのですが…。

貪食しきれない量があると、仲間を呼ぶために炎症物質を出してしまいます。

炎症物質によって血管の内側が腫れると、

血液がさらに通りにくくなり、血圧が上がって、

上がった血圧で内皮に傷が付くとさらにマクロファージ達が集まってきて…。

どんどん高血圧に向かって悪化していってしまいます。

 

最初のマクロファージが貪食しきれるように、

マクロファージ(これも細胞)からコレステロールを引き抜いて

肝臓に持ち帰ってくれるのがHDL。

HDLは運動によって全身のATP必要性が増えると、

効率よくATP産生にまわすために

細胞膜から余った(古い)コレステロールを肝臓に持ち帰ってきます。

 

だから「運動をすると(必要性が増えたので)HDLが増え」て、

マクロファージからコレステロールの引き抜きも増えて…

炎症物質を出さずに

血管内皮細胞のそばにたまった脂質を処理できる可能性が増えてくるのです。

 

これ、高血圧と脂質異常症(高脂血症)の改善になっていますよ!

 

そして運動による血流・血圧の変化が加わって、

動脈の適度な伸び(伸展性)が改善。

脂肪がたまることもなくなって内皮細胞機能が元に戻ると…

血管がしっかり広がることもできるようになり、

上がりっぱなしだった血圧が下がり始めます。

「降圧効果(血圧低下)」ですね。

 

以上、運動には「腹囲・体重減少」、「血糖値低下」、

「血中脂質の改善」、「血圧低下」作用があります。

生活習慣病が「よくなってきた!」状態につながりますね。

 

そして同時に狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や

脳卒中(脳出血や脳梗塞)のリスクも低下します。

…「1、(動物として)生きるため」で出てきた死因の多くに

関係していること、これで分かってくれたはずです。

 

次回から「生活機能低下防止」のおはなしですよ。