4 行政・制度:(2)健康保険制度で見えてきた欠点
医療保険制度で見えてきた欠点を確認しましょう。
医療保険制度は
「どこかが悪くなったときに医療機関にかかりやすい」点では、
費用負担が少なく済むいい制度です。
でも…医療保険制度は「悪くなってから」しか役に立ちません。
重い状態になってから受療するより、
早いうちに(悪くなりそうで、悪くなる前に)何か医療介入できた方が
軽く・早く済む可能性が高まります。
金銭面でも同じことが言えます。
入院・手術等たくさんの医療行為を必要になってから受診するより、
少しの通院やアドバイスで済めば負担はより安く済むはずです。
さらに国の金銭負担も、軽視できるものではなくなってきました。
公衆衛生や医療の向上により、確かに平均寿命は延びました。
同時に「生き残って医療機関のお世話になる人」が大幅に増加。
最初は苦にならなかった金銭負担が、
気が付くと重荷となってのしかかってきたのです。
少々遅いのですが…「このままじゃいかん!」と
行政担当の内閣は、
衛生統計等の各種データを集めて原因と対策を考えました。
そして
「当初の予想よりも高齢者の増加が早い!(人口動態変化)」
「入院者が多すぎる!入院期間も長すぎる!」と気付いたのです。
ここについては「死亡率変化」と「罹患率・有病率」として
衛生統計パート(「2、健康とは」)で確認しましたね。
入院者の増加と長期化は、医療機関の負担にもなっていました。
病床の不足や、
看護師をはじめとする医療従事者の不足が起きていたのです。
さらには、長期入院の人の及ぼす悪影響も次第に明らかになってきました。
入院等による長期臥床は、筋肉や骨の量が減り寝たきりのもとになること。
さらに寝たきりは褥瘡につながり、生活の質を大きく害していくこと。
そして精神疾患による入院に代表される、
「長期隔離により元の生活に戻ることができない人」の存在も
明らかになってきました。
そこで金銭面からも、ヒトの健康面からも、
「入院期間を限定し、早期離床を促す!」ことを目指そうとしたのですが…。
気付いたら「家族」の構造変化で
家で面倒を見てくれる人がいなくなっていました。
ここも衛生統計パート(「家」「社会」の変化)で確認したところですね。
「国民の健康」を守るために、
働きかけ方の変更が必要不可欠な状況です。
次回は、どのように働きかけ方を変更したのか
(変更せざるをえなかったのか)を確認していきましょう。