5 脳神経系と内分泌系のおはなし(18)
大脳辺縁系のおはなしに入ります。
「辺縁」という文字から
「…端っこ?」のイメージを持たれがち。
違います。
むしろ大脳の中央ど真ん中、
普段全然見えない場所です。
動物が生きていくための最低限は何か。
まとめて脳幹とも呼ばれる中脳・橋・延髄と、
運動を担当している小脳。
そして今回おはなしする大脳辺縁系です。
今まで勉強してきた「大脳」は、
動物の生存にとっては必要不可欠ではありません。
もちろん、ヒトがヒトらしく生きるためには
必要不可欠ですけどね。
そんな大脳辺縁系が担当しているのは、
食欲や性欲といった「本能」、
匂いや痛みといった原始的感覚から生じる「情動」、
そしてそれらから生じる「記憶」です。
確かに痛かった原因や場所を覚えていないと、
同じようにまた痛い思いをするかもしれません。
弱肉強食の動物界では、致命傷になる危険があります。
また、匂いは食べられるものの選別だけではなく、
外敵の接近を感じ取り、生殖にも関係してます。
ヒトでは衰えてしまいましたが、
生きるために匂いはとても大事。
伊達に「第1」脳神経(嗅神経)ではないのです。
そんな大脳辺縁系で、覚えておいてほしいのは
記憶担当の「辺縁皮質」という一帯と、
核に位置する扁桃体です。
辺縁皮質には帯状回、海馬、海馬傍回が含まれます。
全体で協力して、「記憶」を担当しています。
このあたりの名前は、
先に進んだらまた出てきますからね。
扁桃体は名前の通り
アーモンド(扁桃)の形をした部分。
情動の処理と記憶に関係し、
特に「恐怖」に強く反応しています。
具体的には交感神経を活性化…
「逃走」一直線です。
さらには顔面の筋肉を担当する
三叉神経(第5脳神経)に働き、
恐怖の表情を作り出しています。
実はうつ状態での
「失敗体験の繰り返す思い出し」には、
この扁桃体の暴走が関係しているのではないか
と考えられています。
大脳辺縁系の近場でもう1つ。
大脳基底核と呼ばれる部分があります。
大脳髄質と呼ばれる部分にある、
神経細胞の塊を「大脳基底核」といいます。
大脳皮質と中脳はじめ脳幹をつなぐ細胞の集まりです。
そして大脳辺縁系の隣に位置しているため、
やっぱり記憶に関係が深い存在です。
大脳辺縁系の海馬につながるような形で、
大脳基底核が耳掛けヘッドホン状になっています。
尾状核の周りには
神経伝達物質のドーパミンで働く線条体があります。
前回のパーキンソン病でうまく命令できなくなるところです。
大脳以外にも
「実質上大脳基底核」と言っていい「黒質」があります。
そちらは中脳にある、
これまたドーパミンで働く神経細胞群です。
大脳のおはなし、一段落。
次回は記憶とホルモン産生地点の、
間脳のおはなしに入ります。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220923更新)