10 核酸・遺伝子のおはなし(11)

性染色体に関係する病気として有名な、血友病についておはなししますね。

血友病は性染色体Xにある情報が少しおかしくなってしまったせいで、

血が止まりにくくなってしまった病気です。

止血についての詳しいおはなしは血液のところで。

ここでは「かさぶたができにくくなっちゃった!」でいいですよ。

 

X染色体上におかしくなってしまった情報があっても、

もう1つのX染色体上の情報が正しければ血友病にはなりません。

だから、女性では「ヘテロでは発症しない保因者、ホモなら発症」です。

血友病が「性染色体劣性遺伝」といわれるのはこのためです。

でも男性にはX染色体は1本しかありません。

おかしい情報を持ったX染色体を受け取った男性は、即発症です。

 

この血友病、一時期のヨーロッパで大流行しました。

大流行したのは市民の間ではなく、「王室」です。

ヨーロッパでは戦乱の時代が長く、政略結婚が多発しました。

ある日突然、おかしくなった情報が王女の1人に生じました。

何かのきっかけで塩基情報がおかしくなり、

DNAのお直しサービスが間に合わなかった、ということですね。

女性ではおかしくなっても、情報がヘテロでは発症しません。

その女性は何も疑いなく他国に嫁いでいきました。

その女性が子供をもうけ、

娘は保因者でありながら他国に嫁いで行って…

近親者での婚姻も多かったことも相まって、

あっという間に各国王室に血友病を引き起こす情報が広まりました。

しかも、国の跡取りの男性では一発発症

子供のうちに重要臓器で出血が起こって夭折(若くして亡くなること)、

成人できても健康体とは呼べない…。

時代柄、呪いではないかと祈祷僧が重用されたそうです。

頻繁な早すぎる王位継承で政治は安定せず、

王室は王子の病気治癒を願う祈祷ばかり。

王室の混乱は市民の不信につながり、王家が滅ぼされた国さえありました。

なお、現在では各国王家に血友病の設計図情報はありません。

 

血友病のおはなしで分かってほしかったこと。

性染色体の設計図情報に異常が生じると、

たとえ劣性遺伝でも即時に病気として現れうること。

そして劣性遺伝のヘテロ状態は、

異常が発現してこない(表に現れてこない)ので見た目ではわからないことです。

近親(者)交配が盛んだったからこそ、

ここまで大規模な問題になったことも付け加えておきましょう。

 

「性染色体」という言葉が出てきましたので、

次回は染色体の振り分けについておはなししますね。