12 血液と免疫のおはなし(3)
赤血球が大きくても貧血になるおはなしに入りますよ。
赤血球が大きい貧血は「大球性貧血」と呼びます。
代表的なのは「悪性貧血(巨赤芽球性貧血)」です。
…この名前、以前出てきましたね。
そうです、ビタミンB12と葉酸のおはなしです。
なぜ赤血球が大きくなってしまうのかというと、
赤血球は成熟するときに細胞分裂が必要になります。
必要な細胞分裂ができないと、
酸素を運ぶ「赤血球」としては役立たずです。
役立たずな大きいだけの「赤血球もどき」ができてしまう…。
これが「大球性貧血」の原因です。
じゃあ、赤血球の大きささえ正常なら貧血にはならないのか。
そんなことはありません。
大きさが正常でも、貧血は起こります。
一番イメージしやすいのが「溶血性貧血」。
正常に赤血球が作られたのに、
細胞膜が壊されてしまっては
赤血球は酸素を運ぶ役目を果たせません。
また、腎臓の働きが悪くなり
赤血球まで尿に出てしまったら
これまた酸素を運ぶ役目は果たせません。
赤血球の大きさが正常でも貧血になる例を
2つ挙げてみましたが、
赤血球の大きさは正常な「正球性貧血」の原因は、
たくさんあって書ききれません。
だから、皆さんはまず「小球性貧血」と「大球性貧血」の
代表例(原因)を理解して、覚えてください。
そのうえで
正球性貧血というものがあることが分かれば、今は十分です。
他の科目で理解が進んでから、
正球性貧血に何が含まれるか追加していけばいいと思います。
MCHとMCHCは、
MCVで貧血原因を分類出来なかったときに見るものです。
しかも、MCHとMCHCは重なるところが多いので、
最初はMCVとMCHを理解していけばいいですよ。
例えば、MCVで正常(正球性)な貧血でMCHを見ると、
MCHが少なければ
「ヘモグロビン不足のせいかな?」と予想できます。
ヘモグロビン(色素)が少ないので、
低色素性貧血と呼ばれます。
MCHも正常なら「溶血?血尿?」と予想できますね。
こちらはヘモグロビン量は正常なので、正色素性貧血です。
MCVが正常でMCHが多い状態はあまり起きませんよ。
もう1つ覚えておくといい赤血球指標が
Ht(ヘマトクリット)。
ヘマトクリットというのは
「血液の体積に占める赤血球の割合のこと」です。
「血液の体積」が母体になる点でMCHCと似ていますが、
ヘマトクリットが見るのは「赤血球の割合」ですよ。
実は、ちょっとした器具を使うと
ヘマトクリットはベッドサイドで
5分くらいで確認することができます。
原理は単純。
「遠心」を使うのです。
遠心とは、カーブで外側に体がもっていかれるあの感覚。
遠心をかけると重いものは端っこに、
軽いものは内側に集まっていきます。
血液を遠心すると、
鉄を含んで重い赤血球が端っこに集まります。
赤血球の赤い層が「血液の何%にあたるか」を見れば、
それがヘマトクリットです。
血液検査室がない診療所等でよく使われますね。
このように赤血球指標はたくさんありました。
たくさんあるということは、
それだけ赤血球は大事な役割を果たしているということです。
まずは数を覚えて、それからMCVを覚えましょう。
代表的な貧血と原因も一緒に理解すると、
後々楽になりますよ。
次回は、白血球のおはなしに入ります。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220625更新)