6 タンパク質代謝のおはなし(2)
胃が消化されないための工夫。
最後のキーワードは「胃粘液」です。
胃の内側は筋肉がむき出しになっているわけではありません。
胃粘膜という粘膜が表面を覆っています。
これならペプシンは胃の筋肉を分解しませんが…
これだけでは胃酸の強すぎる刺激に粘膜がもちません。
そこで粘膜は粘液を出して胃酸から自分を守っています。
これが「胃粘液」。
これなら、胃酸から胃粘膜を守りつつ
ペプシンから胃の筋肉を守ることができるのです。
このように大事な胃粘液ですが、
実はちょっとしたことで分泌量が減ってしまいます。
薬やストレス…胃粘液分泌量が減ると、
胃粘膜に直接胃酸が届いてしまいます。
そうすると胃粘膜が傷んで、
直接胃の筋肉にペプシンが届いたりしたら…!
「ストレスで胃が痛い」とはよく使われる慣用句ですが。
もしかしたら胃酸の刺激に
胃粘膜が痛がっているかもしれません。
…ペプシンに胃の筋肉が分解されてしまう前に、
ちゃんと対処してあげてくださいね。
胃のおはなしが一段落したので、吸収するところへ。
タンパク質も小腸に到着するころには、
ペプシン、トリプシンの分解を受けて、
アミノ酸が2個か3個結合したオリゴペプチドの状態になっています。
これを分解して吸収するために、
小腸上皮細胞上には
ジペプチダーゼ・トリペプチダーゼという酵素がいます。
そして無事に体内に吸収…といきたいところですが。
このとき「輸送体」というものが必要になります。
輸送体はアミノ酸を体内に取り入れてくれるもの。
この輸送体が故障すると、
アミノ酸をうまく取り込むことができずに大変なことになります。
その一例「ペラグラ」を紹介しますね。
ペラグラは必須アミノ酸の1つ、トリプトファン欠乏症。
「必須」ですから、体内で作ることはできません。
その結果…
トリプトファンを使っていたところがおかしくなってしまいます。
口内炎、下痢、水疱(水ぶくれ)、知覚・運動麻痺等が
出てしまうのです。
ひどくなると…死に至ります。
一応、ビタミンBの一種(ナイアシン)が補給できれば、
この病気にならずに済みます。
でも、あとで説明しますがビタミンBは水溶性。
貯めておけないので毎日の食事からとる必要があります。
食事が偏ると…かなり危険ですね。
イタリア語で「皮膚の痛み」を意味する「ペラグラ」。
アミノ酸輸送体の問題で、
必須アミノ酸のトリプトファン欠乏で起こることを
覚えておいてください。
ビタミンBのところでも、もう1度おはなししますね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220403更新)