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10 脳神経系のおはなし(2)感染・腫瘍・脱髄性疾患(7)

小児の小脳に出来るのが特徴の「髄芽腫」。

5歳から15歳が好発年齢で、

小脳にできることから

ふらつき等の小脳失調が起こります。

水頭症から頭蓋内圧亢進症状を起こす前に

摘出してしまいたいところです。

外科的に摘出して、

放射線療法を行うのが一般的な流れ。

最初に化学療法を行うこともあります。

本人にも家族にも、

少し長い治療になることをちゃんと説明しておきましょう。

放射線療法や化学療法に注意しておくこと一般は、

頭に浮かびますね。

さらに成長盛んであり、

体のみならず心の発達課題もありますので、

ちゃんと他の科目の理解を組み合わせていってくださいね。

 

脳腫瘍の約1割(10%)が神経髄腫。

約9割が内耳神経(第8脳神経)、

残りは三叉神経(第5脳神経)に起こります。

髄鞘を作る(シュワン)細胞由来の腫瘍です。

良性ですが、周囲を圧迫するにも関わらず

摘出が難しいことがポイントです。

小脳を圧迫するので、小脳失調(ふらつき等)が出ます。

またすぐそばに顔面神経(第7脳神経)があるので、

顔面神経が麻痺しやすくなります。

顔面神経は顔面の筋肉運動を命令する脳神経。

特に注意しなければいけないのが眼輪筋麻痺です。

眼輪筋が動くから、

私たちは「目を閉じる(まぶたを閉じる)」ことができます。

目を閉じることができないと、

角膜が乾燥してしまい、視力低下が起こる危険性が!

だから、人工涙液等の目薬や、

就寝時のアイパッチ等で角膜保護が必要です。

「目」については、

末梢神経のところでもう少し説明しますからね。

 

神経細胞ではなく

グリア細胞全般の腫瘍がグリオーマ。

悪性度が高い腫瘍です。

グリア細胞の働きは多岐にわたります。

神経の軸索を取り巻く髄鞘を作るシュワン細胞も、

グリア細胞の1つです。

グリオーマは脳に浸潤性に広がり、

けいれんやてんかんを引き起こします。

手術と放射線療法・化学療法になりますが、

次々と再発し、

悪性度を増していく困った腫瘍ですね。

 

脊髄内やその周辺にできるのが脊髄腫瘍。

硬膜の外にできるか、

硬膜の中にできるかでまず分けて、

さらに「脊髄内にできる」か

「硬膜内だけど脊髄の外にできる」かに分けられますね。

脊髄内にできるものは進行がゆっくり。

切除できない位置に出来ることがあるので、

そのときには放射線療法です。

硬膜内でも脊髄外に出来るものでは、

約半数に痛みが出ます。

咳や排便時に痛むことが多く、

背臥位で痛みが強まります。

硬膜外では痛みの後に運動麻痺が出ますが、

とても進行が早いです。

数日で、対麻痺や四肢麻痺が完成してしまいます。

 

脊髄腫瘍の中で一番多い神経髄腫は、

硬膜外や硬膜内脊髄外にできます。

特に後根発生が多く、

増殖して椎間孔から外へ出ようとしている姿が

砂時計型になることもあります(砂時計型腫瘍)。

他のところから転移してきたときには、

さらに硬膜外の運動麻痺完成が早まる傾向があります。

原発性なら、肺や乳房に転移する可能性があります。

症状の多くは腫瘍の圧迫によるものですから、

切除できるなら切除してしまうことが一番です。

対麻痺が出てしまうと

仙骨部の褥瘡や膀胱障害からの尿路感染症が怖いですね。

対麻痺が出る前に気付くことが大事。

対麻痺になってしまったら、

皮膚状態と感染予防に注意ですよ。