10 脳神経系のおはなし(2)感染・腫瘍・脱髄性疾患(9)
同じような脱髄性障害には、
視神経と脊髄が主におかしくなる
「視神経脊髄症(NMO)」や、
中枢神経系に急にたくさんのおかしいところができる
「急性散在性脳脊髄炎(ADEM)」等があります。
特に急性散在性脊髄炎は
小児で各種感染や予防接種後に発生することが多いですね。
感染対象は風疹・麻疹・水痘・単純ヘルペス・
インフルエンザといったウイルス性だけではなく、
マラリアやマイコプラズマ、連鎖球菌なども原因。
そうすると、これらの生ワクチン(予防接種)では
急性散在性脳脊髄炎を起こす可能性がありそうですね。
発熱・頭痛・吐き気・嘔吐だけを見ると
かぜと勘違いしてしまいそうです。
原因から1~2週間でピークを迎える、
一過性の神経症状(けいれんや意識障害)を
見逃してはダメですよ。
副腎皮質ステロイドパルス療法になることは
多発性硬化症と同じ。
副腎皮質ステロイドの副作用を、
家族にもちゃんと説明する必要がありますね。
再発や多発性硬化症への移行もありえますので、
長期的な経過観察になりそうです。
予防接種でこんな怖い状態が起こるなら、
そんなものしなければいいと思うかもしれませんが。
予防接種(ワクチン接種)をするということは、
これら副反応を加味しても
接種を行うメリット(長所)があるということです。
現在日本で小児の定期接種(一定期間内なら無料)対象は、
HBV、ヒブ(インフルエンザ菌)、肺炎球菌、BCG(結核菌)、
日本脳炎、水痘、風疹、麻疹、
四種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)。
近年HPV(ヒトパピローマウイルス:2013~)や
ロタウイルス(2020~)も定期接種対象になりました。
菌やウイルスそのものを弱毒化させたものが
生ワクチンで、
BCG、水痘、風疹、麻疹、ポリオでは
生ワクチンが使われます。
これらは「病原体そのもの」を体の中に入れるので、
予防接種直後の体の中で起こっていることは、
通常の感染と同じです。
でもここで免疫系に頑張っておいてもらえば、
次に感染したときには二次感染状態。
Ig-Gがたくさん出て、
発症しないか、発症しても軽く済むはずです。
もし副作用(先程の急性散在性脳脊髄炎など)が怖くて
接種を受けていないと、
菌やウイルスに初回感染したときは一次応答どまり。
免疫系の反応が出遅れてしまい、
一気に重症になってしまう危険性が高いのです。
だからこそ、定期接種は
「体調の良いときに」「可能な限り」受けてください。
無料期間が終わるから…と
体調の悪いときに予防接種をしてはいけませんよ。
感染兆候(せき、くしゃみ、発熱等)の出ているときに
予防接種をしては、免疫系のお仕事が多すぎて、
免疫を付けるどころか
異物排除が追い付かずに感染状態になってしまいます。
あとは、予防接種の後は休養と安静をこころがけること。
免疫担当細胞(白血球の仲間たち)に
全力で頑張ってもらえるように、
栄養や酸素を無駄遣いしないことですね。
もちろん、予防接種後数日内に多くの人が集まるところに行って
他の感染可能性を高めることなんてもってのほかですからね!
あと、ビタミンB12欠乏で生じるのが
亜急性連合性脊髄変性症。
脊髄の後索と側索の脱髄が起きたせいで、
歩行障害等が出てくる病気です。
位置覚・振動覚が減弱し、
腱反射は亢進も減弱もありえます。
ビタミンB12欠乏というと
巨赤芽球性貧血のイメージが強いものですが、
神経(中枢)とも関係していることを
頭の片隅に入れておいてくださいね。