5 体温のおはなし(2)過敏症と自己免疫疾患(1)
1 過敏症(アレルギー)
過敏症(アレルギー)は、異物を体の外に出そうという
免疫系の自然な働きによって出た症状。
細胞レベルから見れば一見正常なのに、
ヒト個体レベルでは「困った!」になります。
過敏症は4つに分けることができました。
花粉症が代表のⅠ型(即時型)、
ツベルクリン反応が代表のⅣ型(遅延型)。
あとは血管内壁が特徴のⅢ型と、
マクロファージ(単球)が特徴のⅡ型ですね。
(1)花粉症
まずはⅠ型の花粉症と食物アレルギーから始めましょう。
花粉症のメカニズムが、Ⅰ型過敏症の基本です。
異物に対して、ガードマンである抗体(Ig-E)が出て、
抗体の応援要請を受けた肥満細胞から放水車役のヒスタミンが出ます。
ヒスタミンの働きで涙や鼻水が出て、異物よ、さようなら。
免疫が働きすぎると…日常生活に悪影響が出てきますね。
対策としては、異物の侵入を防ぐ(異物を避ける)ことが一番。
避けられないなら、抗ヒスタミン薬(ヒスタミンの邪魔)や、
ステロイド(免疫全般の抑制)等の薬物療法です。
「そもそも異物じゃないんだよ!」と教え込む
減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法)もありますね。
(2)食物アレルギー
同じⅠ型で忘れてはいけないのが食物アレルギー。
これまた食べ物を異物だと認識して
抗体(Ig-E)が出てしまうことが問題です。
小児では入学前に8割は寛解するものの、
卵・小麦・乳製品(3大アレルゲン)を異物対象にされてしまうと、
とても困ります。
ここでいう「寛解」とは、
食べ物を腸管から体内に取り込むときに
異物の認識しない仕組み(経口免疫寛容)ができること。
胃酸分泌や分泌型抗体(Ig-A)の発達によって
免疫寛容状態になるようです。
成人では魚介類に反応する人が増えてきます。
Ⅳ型過敏症が出る人もいますね。
食品衛生法上表示義務があるのは、
卵・小麦・乳製品の小児3大アレルゲンとエビ、カニ、そば、ピーナッツです。
食物アレルギーの症状は原則として30分以内に出ます。
目・皮膚のかゆみ・発赤が出る部分性から、
じんましん、腹部疼痛だけでなく
「血圧低下・血管性浮腫」、
「喉頭浮腫・気管支けいれん」も生じる全身性症状も!
アナフィラキシーショックとは、
抗体産生によって生体が保護されない状態になってしまうこと。
Ig-Eからの応援要請を受けて、
肥満細胞(や好塩基球)は異物を追い出し、
白血球たちが早く到着できるように、
多くの化学物質を一気に放出します。
その結果、早いと5分ほどで各種の症状が出てきます。
じんましん、消化器系症状、呼吸器系症状、循環器系症状…。
特に先程の全身性症状としても紹介した
「血圧低下・血管性浮腫(循環器系症状)」と
「喉頭浮腫・気管支けいれん(呼吸器系症状→窒息原因)」は、
生命にかかわります。
血管のところでおはなしした
「血液分布異常性ショック」を復習しておきましょう。
アレルギーの原因となる異物(アレルゲン)が
体内に入っただけでは反応が出ず、
運動が加わった瞬間に反応がでる「食物依存性運動誘発型」もあります。
昼休みや体育の時間は、要注意ですね。
「アレルギー(過剰症)」である以上、基本は異物の侵入を防ぐこと。
何に反応してしまうのかパッチテスト(プリックテスト)で確認して、
除去食療法です。
ショック状態回避のために、アドレナリン自己注射の準備もお忘れなく!