6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(23)
B アルコール性肝炎
「アルコール性肝炎」は、
原因が分かりやすくていいですね。
多くは放置すると肝炎から
脂肪肝を経て肝硬変になってしまいます。
原因の「飲酒過多」には量も時間も関係します。
一般的には
「1日エタノール75g以上を5年以上」といいますが、
なんだか分かりにくいですね。
「日本酒三合相当」でも、まだ分かりにくい。
例えば、アルコール度数4~5%のビールなら、
500㏄を1日3杯。
アルコール度数12~15%のワインなら、
グラス(120㏄)を1日5杯。
アルコール度数40~50%のウイスキーを
シングル(30㏄)なら、1日5~6杯です。
女性の方が少ない量で、
より早く肝硬変に達してしまう傾向があります。
肝炎を過ぎて機能喪失が始まる線維化が始まると、
圧痛と肝腫大、易疲労性や食欲低下が出てきます。
対策としては、何はなくとも断酒しましょう。
しっかりお酒とさよならできれば、
肝硬変からでも85%以上は5年生存が可能です。
逆にさよならできないと、
5年生存率は35%を切ります。
本人だけではなく、
家族・医療・自助会をはじめとする地域の連携が必要ですね。
本人の断酒をお手伝いする禁酒剤もありますよ。
「酒を飲んだら気持ち悪くなる(不快)」ように、
アルコール分解系の途中を邪魔するお薬です。
断酒して2・3日で
「アルコール性離脱症候群」が出てきます。
手の振戦(手が震える…)はじめ、
発汗・発熱等の自律興奮状態と、幻覚せん妄状態です。
これらを予防するために、精神領域のお薬
「マイナートランキライザー」が出されることもあります。
アルコールと精神との関係については、
呼吸器系の中枢のところでもう少しおはなししますね。
C 薬物性肝障害
「薬物性肝障害」とは、
薬によって肝細胞の障害や肝内胆汁うっ滞が起こること。
予測可能なものも、予測不能なものもあります。
予測不能なものの方が多いのですが…
予測可能な薬
「アセトアミノフェン」を覚えておいてください。
一般によく使われる、解熱鎮痛剤ですね。
ちゃんと添付文書に
「重篤な肝障害」と注意書きされています。
急性肝障害として食欲不振・全身倦怠感が、
肝内胆汁うっ滞として黄疸とかゆみが出ますが、
無症状のこともあります。
とにかく、
そうとわかったら薬を全部やめてください。
処方薬だけではなく、
漢方等の民間薬やサプリメント等の健康食品も全部です。
普通なら、薬を止めて安静にしていれば治るはず。
ただし、劇症化(急に進行!)してしまったら、
血漿交換・血液ろ過透析の対象です。
それでもだめなら、肝移植を待つことになります。