7 体温のおはなし(4)内分泌系(代謝異常)(15)
2 脂質代謝異常と高尿酸血症、痛風
脂質代謝異常のおはなしに入ります。
以前は「高脂血症」と呼んでいました。
でも「血液中脂質は多すぎても少なすぎてもよろしくない!」と
分かって来たため、
血清リポタンパク質の多すぎも少なすぎも
「脂質異常症」と呼びますよ。
少なすぎがよろしくない理由は、
脂溶性ホルモンや細胞膜の成分、
炎症物質の必要性を思い出せば分かるはず。
だけど、現在お目にかかる脂質異常症の大多数は
「多すぎ!」の方です。
(1)脂質異常症
脂質異常の原因は、原発性と続発性に分けられます。
原発性としては
「家族性高コレステロール血症(FH)」を覚えておきましょう。
常染色体優性の、若年性冠動脈疾患です。
細胞膜表面にあるLDLを受け止めるところ(受容体)が
おかしく伝わってしまったために、
LDLはコレステロールを細胞に渡せない状態(LDL-C)のまま
血液中に増えてしまったものです。
続発性の原因は、多岐にわたります。
今まで勉強してきた自己免疫疾患、肝臓・胆嚢の各種機能障害、
甲状腺機能低下やクッシング症候群、
インシュリン非依存型糖尿病(NIDDM)や
神経性の食思不振のほか、
腎臓の働きがおかしくなっても起こります。
脂質異常が起きたときに大事なのは
「いかに動脈硬化を防ぐか」です。
禁煙と肥満是正がポイントになってきますね。
もちろん異常の原因と程度によっては、
薬や人工透析類似のLDLアフェレーシス等を用いることもあります。
でも、あくまで生活習慣改善が基礎かつ基本です。
脂質異常症のある種の終着地点が脂肪肝。
病的に多量の脂質が肝細胞に沈着した状態で、
鳥ならフォアグラですね。
BMIが25以上の約3割、
BMIが30以上の約8割に脂肪肝が見られます。
原因はいろいろありますが、過食と運動不足が双璧ですね。
肝臓は腫れて大きくなりますが、原則として圧痛は出ません。
押して痛いなら、アルコール性肝炎の疑いがありますよ。
症状がないとはいえ、
肥満を伴うときにはたいてい
脂質異常、高血圧、糖尿病のどれかを合併しています。
これ、メタボリックシンドロームにかなり重なりますね。
メタボリックシンドロームとは、
(腹囲男性85cm以上・女性90cm以上の)内臓脂肪型肥満に、
脂質異常、高血糖、高血圧のうち
2つ以上の症状が一度に出ている状態です。
心疾患や脳血管疾患といった
重大な状態を起こしやすい条件がそろっていること、
分かりますか?
だからメタボリックシンドロームを解消しようと、
国レベルで取り組んでいるのですね。