10 各論5:体温(感染・免疫):③原虫に効く薬(2)
赤痢アメーバとマラリア原虫に対しては、
もう日本も無縁ではいられませんね。
マラリア原虫は、
名前の通りマラリアのもとになる原虫。
赤血球に感染して増殖し、
食い破って血液中に幼生(幼虫)がでるたびに高熱が出ます。
三日熱マラリアは約48時間おき、
四日熱マラリアは約72時間おき。
卵形マラリアは約50時間おきに高熱です。
発熱周期にパターンのない熱帯熱マラリアもあります。
マラリア原虫に入り込まれにくい鎌状赤血球は、
酸素運搬能力が低いものの特定地域では有利な遺伝情報。
マラリア発生地域では鎌状赤血球が残っているおはなしは、
生化学の単一遺伝子疾患のところでしましたね。
マラリアに効くお薬は塩酸キニーネ。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00000743
赤血球から出てきた幼生には効きますが、
赤血球の中にいるときには効きません。
禁忌はH1ブロッカーのアステミゾール使用中です。
H1はヒスタミンの受容体の1つ。
塩酸キニーネによる相互作用で血中アステミゾールが増え、
重い心血管系副作用が出てしまいます。
あと、胎盤を通過しますから
妊娠・妊娠可能性のある人も禁忌です。
併用注意にワーファリンと
抗ウイルス薬のリトナビルもありますね。
赤痢アメーバは、
これまた名前通り赤い下痢を引き起こすアメーバ。
飲食物にシスト(休眠状態)が入り込む感染が主ですが、
性行為多様化による肛門からの性感染側面もありますよ。
メトロニダゾール(テラジール)が赤痢アメーバに効くお薬。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054871
菌や原虫の細胞内で代謝されると、
DNAを切ってしまう働きがあります。
禁忌は妊娠3か月までと、
脳や脊髄に器質疾患のある人。
胎児に移行してしまうので、
胎児のDNAを切断されてはたまりませんね。
脳や脊髄の器質疾患があると、
けいれん、意識障害、小脳失調症状等の
中枢症状が出てしまう可能性がありますよ。
メトロニダゾールは、細菌性の腸炎や膣炎、
ピロリ菌やトリコモナス症にも使われます。
アルコールをはじめ併用注意がありますので、
一度併用注意欄にも目を通しておいてくださいね。
次回はトリコモナス原虫から
性感染症原因病原体にも入っていきましょう。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)