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10 各論5:体温(感染・免疫):③原虫に効く薬(2)

2023年5月3日

赤痢アメーバとマラリア原虫に対しては、

もう日本も無縁ではいられませんね。

 

マラリア原虫は、

名前の通りマラリアのもとになる原虫。

赤血球に感染して増殖し、

食い破って血液中に幼生(幼虫)がでるたびに高熱が出ます。

三日熱マラリアは約48時間おき、

四日熱マラリアは約72時間おき。

卵形マラリアは約50時間おきに高熱です。

発熱周期にパターンのない熱帯熱マラリアもあります。

マラリア原虫に入り込まれにくい鎌状赤血球は、

酸素運搬能力が低いものの特定地域では有利な遺伝情報。

マラリア発生地域では鎌状赤血球が残っているおはなしは、

生化学の単一遺伝子疾患のところでしましたね。

 

マラリアに効くお薬は塩酸キニーネ。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00000743

赤血球から出てきた幼生には効きますが、

赤血球の中にいるときには効きません。

 

禁忌はH1ブロッカーのアステミゾール使用中です。

H1はヒスタミンの受容体の1つ。

塩酸キニーネによる相互作用で血中アステミゾールが増え、

重い心血管系副作用が出てしまいます。

あと、胎盤を通過しますから

妊娠・妊娠可能性のある人も禁忌です。

併用注意にワーファリンと

抗ウイルス薬のリトナビルもありますね。

 

赤痢アメーバは、

これまた名前通り赤い下痢を引き起こすアメーバ。

飲食物にシスト(休眠状態)が入り込む感染が主ですが、

性行為多様化による肛門からの性感染側面もありますよ。

 

メトロニダゾール(テラジール)が赤痢アメーバに効くお薬。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054871

菌や原虫の細胞内で代謝されると、

DNAを切ってしまう働きがあります。

 

禁忌は妊娠3か月までと、

脳や脊髄に器質疾患のある人。

胎児に移行してしまうので、

胎児のDNAを切断されてはたまりませんね。

脳や脊髄の器質疾患があると、

けいれん、意識障害、小脳失調症状等の

中枢症状が出てしまう可能性がありますよ。

 

メトロニダゾールは、細菌性の腸炎や膣炎、

ピロリ菌やトリコモナス症にも使われます。

アルコールをはじめ併用注意がありますので、

一度併用注意欄にも目を通しておいてくださいね。

 

次回はトリコモナス原虫から

性感染症原因病原体にも入っていきましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)