12 各論7:呼吸(中枢・精神):⑧うつ・双極性障害の薬(1)
いよいよ精神分野のもう1つのメインブロック、
「うつ(鬱)病と双極性障害」に効くお薬の紹介にはいります。
2つの病気が一緒に並んでいるのは、
どちらも「うつ状態(うつエピソード)」がある点で
共通しているから。
気分が下向きで、
何にも興味が沸かない状態が一定期間以上続いたものが
「うつエピソード」。
1回でも上向きになる
(上向きになりすぎて歯止めが効かず大変なことになる)なら、
そうエピソードとうつエピソードが必要な双極性障害。
上向きにならずにずーっと下向きならうつ病ですね。
「うつ」も、神経伝達物質の異常と深く関係しています。
セロトニンとノルアドレナリンの双方が
不足していることが多いですね。
そこで「不足しているセロトニンを何とかすれば
うつに効く薬ができるはず…」
これがうつに効く薬の始まりになります。
最初に出来た抗うつ薬は、
炭素で3つの環状構造を作ったものだったので、
「三環系(抗うつ薬)」と呼ばれます。
イミプラミン塩酸塩(トフラニール)を紹介しましょう。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00001871
禁忌は添付文書を見れば分かりますが…結構多いです。
本剤を含む三環系にアレルギーのある人、
緑内障や尿閉のある人、
MAO阻害薬の使用中(中止後2週間以内を含む)、
心筋梗塞の(初期)回復期、QT延長(症候)のある人です。
大きく分けてみると…「アレルギー」、「心電図が変」、
「神経伝達物質系
(抗コリン作用で悪化又はMAO阻害薬)」になりますね。
アレルギー以外の2つを理解するために、
イミプラミン塩酸塩に代表される
三環系抗うつ薬の働きを確認しましょう。
三環系抗うつ薬は、セロトニン、ノルアドレナリンの
神経細胞間での分解(再取り込み)を邪魔します。
使い捨てだったセロトニンやノルアドレナリンが
分解されずに神経細胞間に残るので、
あたかも「神経伝達物質が増えた!」ようになります。
ある程度たまらないと効果が出てこないので、
どうしても効くまでに時間(1~2週間)がかかってしまいます。
そして神経伝達物質受容体への働きには、あまり選択性がありません。
結果、ヒスタミン(H1受容体)、ドーパミン(α受容体)、
アセチルコリン(M(ムスカリン)受容体)までも
邪魔されてしまいます。
だから心電図への影響(α受容体邪魔された)や、
抗コリン作用(M受容体邪魔された)が出てしまうのです。
なお、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)も
モノアミンの分解を邪魔するので、同様の働きをしています。
モノアミンはセロトニン、ヒスタミン、
ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンのこと。
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https://5948chiri.com/anat-5-2/
ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンは
「カテコールアミン(カテコラミン)」とも言いましたね。
パーキンソン病に効く薬のところでは紹介できませんでしたが、
ドーパミンの分解だけを邪魔する(セレギリン(エフピー)のような)
MAO-B阻害薬は抗パーキンソン薬として使われます。
同じような働きをする薬が重なったら…
必要以上に効果が強く出すぎてしまいますね。
だから、MAO阻害薬使用中(中止後2週間以内)は禁忌なのです。
MAO阻害薬は、本剤と併用禁止になりますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20240425更新)