3 薬に共通するおはなし(2):分布(D)(3)
用量反応曲線は薬ができるための大前提。
そんな用量反応曲線で覚えてほしい言葉は、
作用量(ED)、中毒量(TD)、死に至る量(LD)です。
ED(effetcive dose)は、
薬の量と「薬の主作用が何%に出たか」の曲線。
TD(toxic dose)は、
薬の量と「薬の中毒作用が何%に出たか」の曲線。
LD(lethal dose)は、
薬の量と
「薬のせいで何%が死んでしまったか」の曲線です。
横軸に薬の量(の対数)、縦軸に百分率(%)を取って、
ED、TD、FDを示したものが用量反応曲線ですね。
LDの量を体に入れてしまったら、
それは「薬」ではなく、ただの毒です。
EDは100%にしたいところですが、
そのせいで「ひどい中毒作用が必ず出る!」だと
使いにくい薬ですね。
なんとか「主作用がちゃんと出る量」で
「中毒作用が可能な限り出ない量」を探す…
これが薬の前提にあるおはなしですよ。
このとき出てくる「安全域(治療係数)」というのは、
LD50をED50で割った値のことです。
LD50というのは、50%が死んでしまう薬の量。
ED50というのは、
50%に効果が出る(主作用)薬の量です。
具体例でいきましょうね。
あるお薬Aが、10gだと50%にねらった効果が出ます。
80gだと、50%は死んでしまいます。
このお薬Aの安全域は80÷10=8ですね。
さらにあるお薬Bは、
4gだと50%にねらった効果が出ます。
20gだと、50%は死んでしまいます。
お薬Bの安全域は…20÷4=5ですね。
「…あれ?Bの方が少しで効くかと思ってたら、
Bだとちょっと量を間違えたら死の危険?」
そうですね。
「安全域の数字は、
大きいほうが薬として使いやすい(安全)だ」ということです。
例えば、
心臓の働きが良くないときに使われる薬に
ジギタリス(製剤)があります。
心臓の働きを活発にしてくれる(主作用)薬ですが、
不整脈や徐脈(副作用)がでる薬でもあります。
ジギタリス(製剤)の安全域は2~3。
…すっごく、安全域が狭くて
中毒(不整脈・徐脈をはじめ胃腸症状等も)を
起こしやすい薬です。
本来は「使いにくい薬」なのですが、
「うまく動いてくれない心臓を、
ちゃんと動くようにする」意味で
「よく注意した上で使うなら、有効」な薬の代表例です。
だから、ジギタリス(製剤)を使っている人がいたら、
血中濃度のチェックはもちろん、
起こりうる副作用を思い浮かべて、
常にその有無を気にしておく必要があるのですね。
このように「薬」の働きを左右する
薬の量(薬の濃度)はとても大事なものです。
だから輸液の調整をはじめとする濃度計算が、
看護師国家試験で問われてくるのです。
そして血中アルブミン量も、
血液中の薬の濃さ
(血液にのって効かせたい細胞に届く量)に
関係してくることも勉強できました。
他にも「薬」の働きを左右するものはありますよ。
体の中にある「他の物」との関係で薬の働きが増減する
「相互作用」です。
相互作用は
吸収(A)、分布(D)、代謝(M)に関係してきます。
吸収の復習と代謝の予習もかねて、
おはなししていくことにしましょうね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221119更新)