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3 薬に共通するおはなし(2):分布(D)(6)

2022年11月19日

薬を分解するチトクロームP450の邪魔のされ方は、

大きく分けて3通りです。

 

同じ酵素で分解される薬を2種類飲んで

酵素の作業量が2倍に増えたせいで、

個々の薬を飲んだ時よりも

分解される量が減ったパターン1。

 

「酵素で分解されたもの」が

酵素にくっついて酵素が働かなくなり、

同じ酵素が担当していた薬が分解されなくなった

(分解される量が減った)パターン2。

 

酵素に薬がくっついて酵素が働かなくなり、

同じ酵素が担当していた薬が分解されなくなった

(分解される量が減った)パターン3です。

 

生化学の酵素のところでおはなしした

「3つのじゃま」と似ていますね。

そっくりそのままではありませんが…。

パターン1は拮抗阻害。

ビタミンKとワーファリンのおはなし、再登場です。

パターン2とパターン3は

分解産物(反応生成物)か

薬(基質)そのものかの違いはありますが、

非拮抗阻害に似ています。

邪魔のされ方の具体的内容を覚える必要はありませんよ。

 

相互作用をする薬をいくつか具体的に見ていきましょう。

パターン1にあたるのが、

「降圧剤のインデラルと

片頭痛治療薬のリザトリプタン」ですね。

 

パターン2にあたるのが、

「細菌に対して効く抗生物質の一部

(マクロライド系抗生物質:エリスロマイシンなど

←分解物が酵素に付く)と

睡眠導入剤のドルミカム」。

抗生物質の分類については、

各論の感染症のところでおはなししますよ。

 

パターン3にあたるのが、

「消化性潰瘍薬のタガメット(←酵素に付く方)と、

降圧剤(インデラル、アダラート等)、

睡眠導入剤のハルシオン、

抗てんかん薬のカルバマゼピン…などなど」。

タガメットの名前を聞いたことがなくても

「ガスター」の名前を耳にしたことはあるのでは?

 

「多すぎ!覚えられない!」と悲鳴を上げた人、落ち着いて。

深呼吸して、もう少しだけ読み進めてください。

 

実際には、

ここに挙げたよりもはるかに多くの相互作用があります。

でも、それらは薬に情報としてちゃんと書いてあります。

それが添付文書ですね。

医師や薬剤師は添付文書を読んで、

これら相互作用がないかを

確認して処方・調剤しているのです。

添付文書には薬の名前(商品名)・形や

正式名称(一般名)・化学式、用量や用法、

相互作用等の大事な情報が書いてあります。

 

特に注意が必要なところは、

白地に赤文字で書いてありますよ。

「この患者さんにこの薬を使ってはダメですよ」という

「禁忌」がその代表ですね。

 

だから、薬を扱うときには、

添付文書をちゃんと読むこと。

覚えるのではなく、

「そのとき確認すること」が大事です。

何回も繰り返し出てくる特に重要な相互作用については、

各論のところで注意喚起しますからね。

 

次回は、相互作用で薬の効果が弱まるときのおはなしです。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20221119更新)