3 薬に共通するおはなし(2):分布(D)(6)
薬を分解するチトクロームP450の邪魔のされ方は、
大きく分けて3通りです。
同じ酵素で分解される薬を2種類飲んで
酵素の作業量が2倍に増えたせいで、
個々の薬を飲んだ時よりも
分解される量が減ったパターン1。
「酵素で分解されたもの」が
酵素にくっついて酵素が働かなくなり、
同じ酵素が担当していた薬が分解されなくなった
(分解される量が減った)パターン2。
酵素に薬がくっついて酵素が働かなくなり、
同じ酵素が担当していた薬が分解されなくなった
(分解される量が減った)パターン3です。
生化学の酵素のところでおはなしした
「3つのじゃま」と似ていますね。
そっくりそのままではありませんが…。
パターン1は拮抗阻害。
ビタミンKとワーファリンのおはなし、再登場です。
パターン2とパターン3は
分解産物(反応生成物)か
薬(基質)そのものかの違いはありますが、
非拮抗阻害に似ています。
邪魔のされ方の具体的内容を覚える必要はありませんよ。
相互作用をする薬をいくつか具体的に見ていきましょう。
パターン1にあたるのが、
「降圧剤のインデラルと
片頭痛治療薬のリザトリプタン」ですね。
パターン2にあたるのが、
「細菌に対して効く抗生物質の一部
(マクロライド系抗生物質:エリスロマイシンなど
←分解物が酵素に付く)と
睡眠導入剤のドルミカム」。
抗生物質の分類については、
各論の感染症のところでおはなししますよ。
パターン3にあたるのが、
「消化性潰瘍薬のタガメット(←酵素に付く方)と、
降圧剤(インデラル、アダラート等)、
睡眠導入剤のハルシオン、
抗てんかん薬のカルバマゼピン…などなど」。
タガメットの名前を聞いたことがなくても
「ガスター」の名前を耳にしたことはあるのでは?
「多すぎ!覚えられない!」と悲鳴を上げた人、落ち着いて。
深呼吸して、もう少しだけ読み進めてください。
実際には、
ここに挙げたよりもはるかに多くの相互作用があります。
でも、それらは薬に情報としてちゃんと書いてあります。
それが添付文書ですね。
医師や薬剤師は添付文書を読んで、
これら相互作用がないかを
確認して処方・調剤しているのです。
添付文書には薬の名前(商品名)・形や
正式名称(一般名)・化学式、用量や用法、
相互作用等の大事な情報が書いてあります。
特に注意が必要なところは、
白地に赤文字で書いてありますよ。
「この患者さんにこの薬を使ってはダメですよ」という
「禁忌」がその代表ですね。
だから、薬を扱うときには、
添付文書をちゃんと読むこと。
覚えるのではなく、
「そのとき確認すること」が大事です。
何回も繰り返し出てくる特に重要な相互作用については、
各論のところで注意喚起しますからね。
次回は、相互作用で薬の効果が弱まるときのおはなしです。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221119更新)