8 各論3:体温(消化器系):小腸・大腸(2)大腸(3:下痢と便秘4)
下痢のおはなし一段落。
便秘のおはなしに入ります。
便秘は腸管の中に便が滞在しすぎて、
便の水分が少なく(硬く)なったもの。
「水分を含ませる」か
「腸管に刺激を与えて動いてもらう」で、
便秘を解消できそうですね。
便に水分を多く含ませる薬の例が
ラクツロース(モニラック)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051628
「ぎゅうぎゅうすかすか(浸透圧)」を利用して
腸の中に水分を移動させます。
さらに腸内細菌が分解しやすいものを含んでいるので、
腸内細菌の働きでpHが下がり(酸性になり)ます。
そのせいで腸内環境が良くなり、
できてしまったアンモニア(水に溶けてアルカリ性)も
pHを動かす暇なく中和されていきます。
水分も、腸内細菌もめでたしめでたしです。
ラクツロースの禁忌はガラクトース血症の人。
「腸内細菌の分解しやすいもの」として
ガラクトースも含まれているからですね。
ガラクトース血症は、
ガラクトースを代謝(分解)する酵素が
変な形で遺伝してしまったもの(常染色体潜性(劣性)遺伝)。
適切な治療をしないと生きていけないので、
新生児マススクリーニングの1つです。
そんな人に分解できないガラクトースを
体の中に入れてしまってはいけませんね。
ガラクトースをはじめ糖が含まれる…ということで、
糖尿病の人には慎重投与になりますよ。
水分を便に加えつつ、膨張して腸管に刺激を与える薬の例が、
カルメロースナトリウム(バルコーゼ)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059947
水分を含んで、
粘り気のあるぺとぺとした状態(粘性コロイド)になります。
ヒトはこれを消化できないので、
便の中や周りに水分が保持されて
つるりと出しやすい便になるのですね。
禁忌は急性腹症と重度の硬結便の人。
どちらも症状が悪化してしまう恐れがあるからです。
あまりに便塊が大きくなり硬くなってしまった後では、
薬で水分を補ってもどこにも動けません。
さらに周囲を圧迫してしまったら、
症状が悪化してしまいますね。
急性腹症は、急に発症して激しい腹痛を伴い、
すぐに診断・治療・手術が必要なもののこと。
穴が開いてしまった穿孔や
虫垂炎・胆嚢炎・膵炎(と胆石等)の重度炎症、
腸重積やヘルニア嵌頓・複雑イレウス等が含まれます。
大動脈解離や瘤の破裂、子宮外妊娠破裂のように
消化器系とは関係ないものも含まれることに注意です。
これらのときには、すぐに原因判明させること。
何も考えずに
便の不具合解消を図ってはいけない…ということは
下痢のところでしっかりと勉強しましたよね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230318更新)