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8 各論3:体温(消化器系):小腸・大腸(2)大腸(3:下痢と便秘7)

2023年3月18日

検査や手術前に使う下剤(便を強制的に排出させる薬)には、

浣腸もありますね。

ここでは、良く使われるグリセリン浣腸を紹介します。

 

浣腸は、肛門から薬を入れてその作用を発揮させるもの。

グリセリン浣腸は排便を促すもので、

検査・手術前の腸内容物除去にも使われますね。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00048196

グリセリンは、脂質で勉強したベルトハンガーそのもの。

保水力(水を保つ力)が強く、

腸内にある水分を吸収して便の中へとしみ込んでいきます。

さらに「濃い」ために、

「ぎゅうぎゅうすかすか(浸透圧)」に従って

腸管壁の水分を腸管の中へと引っ張り出します。

これは腸にとって刺激になりますから、

排便につながる…というわけです。

 

禁忌は腸管内出血、腹腔内炎症、

腸管に穿孔又はその恐れのある人。

そして吐気・嘔吐・激しい腹痛等の急性腹症が疑われる人、

全身衰弱の強い人や下部消化管手術直後の人にも禁忌です。

急性腹症は原因究明第一。

全身衰弱の人は、

強制的排便によって体から水分が失われ、

ショックを起こす可能性があります。

それ以外の人は蠕動亢進によって悪影響

(出血増、穿孔拡大、手術縫合部離れ等)の

可能性があるからですよ。

 

使用上の注意に「妊婦・妊娠可能性のある人では

子宮収縮による流早産の可能性」とも書いてありますね。

 

あとは肛門に入れたものが働く前に

体の外に出てきてしまわないように、

大腸の走行を思い出しましょう。

左側を下にした横向き(左側臥位)なら、

直腸からS状、下行結腸へと薬が自然に流れてくれますよ!

 

「ぎゅうぎゅうすかすか(浸透圧)」に関係するものとして、

高浸透圧利尿製剤があります。

こちらは「利尿」なので、

便ではなく尿を排出する薬ですね。

ここではD-マンニトール(マンニットール)をご紹介です。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066871

 

D-マンニトールは、

ヒトの体内で代謝(分解)されません。

そのままの形で、再球体でろ過され、

再吸収もされずに体の外に出ていきます。

一見、何のために体に入れたのか分からなくなりそうですが…。

ヒトの体の中(血管内)に入ったということは、

その分血管内が外と比べて

「ぎゅうぎゅう」になったということ。

血管の外から中へ、水分が流れ込みますね。

そして血液は腎臓の糸球体で「ろ過」されます。

しみ出てきた水分もD-マンニトールも、

ろ過されて原尿になります。

しかも再吸収されませんから、

血管の外にあった水分がどんどん尿になって出ていくのです。

その結果、脳脊髄液や房水といった血管外水分が減る

(減圧する)ことになるのです。

 

次回、D-マンニトールの禁忌等を確認していきましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20230318更新)