9 呼吸器系のおはなし(1)通り道と赤血球(4)
2 気管・気管支の異常
空気の通り道にあたる、
気管と気管支はただの管ではありません。
姿勢によってつぶれてしまわないように
輪状の軟骨に覆われていて、
太さを多少変えられるように平滑筋が付いています。
内側は粘膜で覆われ、
異物侵入を防ぐための繊毛が生えています。
鼻や口を経由し、
食べ物と共通通路の咽頭を超えて、
咽頭に入ってきた空気は気管に入ります。
気管は最初の枝分かれで
右と左の主気管支に分かれますが、
枝分かれは左右対称ではありませんね。
右に向かう分かれ道は直滑降なので
異物は右に落っこちやすくなっています。
どんどん枝分かれを繰り返し、
20~25回の枝分かれで交換所の肺胞に到着です。
(1)かぜ症候群
まずは、一番身近な「かぜ(かぜ症候群)」から。
鼻腔から声門までの「上気道」から
声門以下の「下気道」に至る、
呼吸器系に急性の炎症を起こし、
約1週間の経過で治癒に向かうのが、かぜ症候群。
上気道だけに限定して、主に鼻症状(鼻汁、鼻閉)で、
発熱・頭痛・関節痛といった全身症状が少ないと、
「普通感冒」と呼ばれることもあります。
「あれ?風邪ひいた?」状態ですね。
8~9割は、ウイルス原因。
残りが細菌、マイコプラズマ、クラミジア等のせいです。
ウイルスのトップ2は、
ライノウイルスとインフルエンザウイルス。
ここではライノウイルスとインフルエンザウイルスによる
かぜ症候群に限定しておはなししますね。
ライノウイルスはRNAウイルス。
自分の情報を伝える記録媒体がRNAということは、
情報のお直しがなく1本鎖であることから、
すぐに変化することが分かりますね。
100種類以上のタイプがあり、
1つのタイプに免疫ができたと思ったら、
次にかかった…ということも起こります。
ライノウイルスの大好きな温度は33~35℃。
体温より低いところ好きなので、
上気道のうち特に鼻腔で増えやすいですね。
ただ、免疫が不十分な小児では、
副鼻腔炎だけでなくもっと奥まで入り込んで、
気管支炎や肺炎、中耳炎を起こすこともあります。
主に手指経由の接触感染ですから、手洗いをしっかりと!
インフルエンザウイルスもRNAウイルス。
A型とB型に大別できますが、
これまたすぐに抗体対象になる部分(抗原:表面構造)が
変わってしまいます。
気道で増殖して、咳、くしゃみが出るだけではありません。
1~2日の潜伏期を経て、急性の強い全身症状が出てきます。
高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感…肺炎を起こすこともあります。
インフルエンザウイルスのワクチン接種が毎年問題になるのは、
この急性・強力な全身症状があるせいです。
肺炎さえ合併しなければ、1週間ほどで改善してくるはず。
肺炎合併のハイリスク因子は、免疫不全はもちろん、
慢性呼吸器疾患、腎疾患、心疾患、高血圧、糖尿病。
呼吸器疾患以外は、勉強済みですね。
抗ウイルス剤はありますが、
可能ならばワクチン(不活化ワクチン)接種を
しておいた方がいいですよ。