11 各論6:呼吸(呼吸器系):気道(2)
気管支喘息に使われる気管支拡張薬として、
テオフィリンを紹介しますね。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059597
テオフィリンの働きを、ちょっと良く見ておきましょう。
テオフィリンはcAMPを分解する
ホスホジエステラーゼを邪魔する薬。
cAMPというのは、
受容体にはまった水溶性ホルモンの働きを細胞内に伝える
第二メッセンジャーでしたね。
1度使われたら分解されるはずのcAMPが分解されなくなりますから、
受容体が刺激され続けているのと似た状態になります。
cAMPが増えた結果、
腫瘍壊死因子(TNF-α)と炎症物質ロイコトリエンができにくくなり、
気道の炎症は治まる方向へ。
これ、間接的な気管支拡張ですね。
テオフィリンには直接的な気管支拡張作用もあります。
先程同様cAMPが働くのですが…
頭の中に一瞬「?」が浮かんだ人がいるのでは?
「あれ?強心薬はcAMPで心筋収縮力が上がったはず…。
気管支、狭くなるんじゃないの?」
前半は、まさにその通り。
cAMPを増やして心筋収縮力を上げるのが強心薬でした。
でも、後半は心配ご無用。
心臓と気管支にあるアドレナリン受容体は、
タイプが違いましたね。
心臓にあるβ1受容体にアドレナリンがはまると、
心筋の収縮力を上げて拍出量を増やします。
気管支や血管壁にあるβ2受容体にアドレナリンがはまると、
平滑筋は緩まり、気管支は拡張する(広がる)のです。
同じものがはまっても、
受け止め方(受容体)で働きが変わりました。
はまった後出るもの(cAMP)が増えたときも、
受け止め方(受容体)次第で
働きが変わることを忘れないでくださいね。
あと、テオフィリンは
心拍を抑制する方向に働くアデノシン受容体に対し、
拮抗的に働きます。
つまり「心拍が上がりやすくなる」ということですね。
あとで中毒症状を確認するときに、
これらの働きをもう1度思い出してくださいね。
テオフィリンの禁忌は、
薬自身とキサンチン系薬剤に過敏症のある人。
キサンチン系薬剤というのは、
テオフィリンと同じく気管支拡張薬です。
後から出てくるテオフィリンの中毒症状を
起こしやすくなってしまいます。
慎重投与対象はそれなりに多いので、次回確認しましょうね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230624更新)